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搬入直前

いよいよ切羽詰ってきた日、友達のSさんが我が家に助っ人としてやって来ました。「ちょうど夏休みだから手伝いできるよ」と言ってもらったものの、折角のお休みを私の手伝いでつぶすのは・・・と思っていたのですが、そんなことも言っていられなくなり、お言葉に甘えることにしたのです。そんなことならはじめから頼んでおけばよかったのですが、そのあたりについてはもう後でまとめて反省することにします。

実はまだまだ片付いていないことが多く、作品につけるキャプションやPOPなどをパネルにはりつけてもらったり、仮面を増産してもらったり、芳名帳を飾ってもらったり、かなりこきつかうことになってしまいました。

 

お昼は、一人ではなかなか食べることのないデリバリーピザ。おもたせのデザートもいただいて、作業ははかどるわ楽しいわ、「間に合わないかもしれない!」とかなり不安定だった気持ちがおかげで大分落ち着きました。

「初日も手伝いに行くからね」と言ってくれた彼女、そんなに何日も来て貰うわけには・・・と思いましたが、「楽しいからいいんだよー」と。

 

何で皆こんなに気前がいいんだろう。自分はこんなに気持ちよく人を手伝ったりできているだろうか?反省しきり、いやそれはあとまわしにするのでした。これだけたくさんの人たちの力をかりているのだから、なんとしてもいい展示にしなくては!ラストスパート、気合をいれなおします。


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最終更新日 : 2010-09-08 22:42:57

顔はめをつくろう

 搬、搬入日まであと数日。会場レイアウトを考えようとルデコを訪れました。ちょうどグループ展が開催されていて、その作品量に圧倒され、やはり「顔はめ」を作ることを、急遽決意。

 

実は当初、通りからガラスごしに見える立地を生かして、お姫様になれる顔はめを置くことを考えてはいました。ただ、そのあと敬愛する高橋真琴さんの展示でも同様の顔はめがあったことを知り、真似をしているようなのでやめよう・・・と思ったのです。でも、会場がスカスカでは困るし、背に腹はかえられない!いまさら真似したといって、そもそもこの画風が高橋先生はじめ先人の真似なわけで。こだわってもしょうがない、とあっさり判断を翻し、顔はめ用イラストを描き始めたのは、またしても搬入日の前日でした。一日で仕上げてくれる、リーズナブルな業者さんをみつけられたのも幸運でした。自分でもあきれるほどのギリギリペースでデータを入稿、バタバタと搬入の梱包もしつつ、あっという間に日付は変わっていき、なんとか準備が整ったのは、大げさでもなんでもなく、赤帽さんが来る直前でした。


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最終更新日 : 2010-09-09 05:32:46

いよいよ搬入日

 

 

とうとう搬入の日、荷物と共に赤帽の車に乗り込み(いえ荷台ではなく助手席です)、渋谷のギャラリーにむかいます。搬入は、高校時代からの友人のYさんFさん、カメラマンの野呂さん、そしてバッグ作家の青山さんが手伝ってくださるのです。

作品のことで頭がいっぱいで、搬入はまあなんとかなるか、頼める相手も思いつかないし、とぼんやりしていた私にYさんがメールをくれて、「搬入とか手伝うよ」といってくれたときにはびっくりしました。考えてみたら一人ではどうしようもないのです。青山さんも「搬入ははじめから手伝うつもりだから」と、作品づくりでへとへとなのはきいていたので申し訳ないと思っていながら、ここでもまた結局皆の好意に甘えることにしました。

ルデコのオーナー島中さんも、必要な什器を揃えていてくれます。

荷物のおろしは赤帽のドライバーさんがあっという間にやってくれ、「荷おろしのあいだに設置について考えよう」などとのんきにしていた私は、すぐにまわりから「それで、何をどうすればいいの?」とせっつかれることになりました。・・・ああ、我ながらどれだけつかえないんだ。

 

 

 

それでも「ここをこうしたい」「あれをああしたい」と、指示ではなく希望をつたえると、その方法は各人が考えてくれるという、素晴らしい環境の中、少しずつ会場はできあがっていきました。もし私が会社の社長だったらこういう社員は金の下駄をはいてでも探す(…?)と、心底思います。でもこれは仕事ではないからこそもらえるギフトのようなものなのだ、ということは、設営中もひたひたと胸に染みていました。そういえばYさんやFさんには、高校の剣道部で一緒だったころから、文化祭だの何だのでいろいろ一緒に巻き込まれてもらっていたなあ。

 

作業に疲れたところで、Fさんの差し入れの手作りおにぎりやマフィンでひとやすみです。一番働いていない(今ふりかえってもこれは確かです)自分が一番疲れていて、ごはんの後はもうほとんど日本語にならない言葉を発しているのをみかねて、皆がどんどん作業をしてくれるのが本当にありがたかったです。青山さんには、小物のディスプレイまでまかせてしまいました。「とりあえず、並べるだけは並べるから、ちゃんと後で自分の好きなように直してね!」といわれたはずなのですが、多分当日ごらんいただいたのは、彼女の並べたほぼそのままです。

・・・私はこれを自分の個展だなどといっていいんでしょうか・・・。

 

なにはともあれ、皆でああでもないこうでもないと相談しながらやるうちに、会場は思ったよりもずっといい感じになってきました。コラボレーションバッグは、モチーフとなったイラストと一緒に展示。ぬりえコーナーも、エコバッグのコーナーも、物販コーナーもできました。顔はめも堂々とそびえ立っています。ガラスには透明なシートにプリントしたイラストをのれんのように吊るしました。仮面は結局、入り口近くの棚にかざり、顔はめといっしょに「ご自由に試着(?)できます」の撮影コーナーにしました。どうしようと迷っていたお人形のついた傘はピアノの上に。書庫は、やはり青山さんの鶴の一声で、「表紙ではなくイラストのページを表に出す」陳列方法に。芳名帳は羽ペンと一緒に、期間中「懺悔部屋」とよばれる小さなスペースに、ミニテーブルと椅子と共に設置しました。

 

これで明日、Chimmieさんがカフェスペースを整えてくれれば、「真夏の昼の姫展」はいよいよ開幕です!


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最終更新日 : 2010-09-10 20:20:09

その朝


「真夏の昼の姫展」初日の朝。まだギャラリーのかたもいない会場で、私はひとり夢の中のような気分でいました。

これから最後の準備をして、ドレスに着替え(おお)、chimmieさんを迎えて打ち合わせもしなくてはいけないので、ぼーっとしていたのはほんの数分だったと思うのですが、不思議な時間でした。

 

ギリギリに入手したフレームにおさまったイラストは、大小あわせてカラーが5点、モノクロが8点。小物やアクセサリーは、数がまとまれば販売したかったけれど、そこまで作れなくて結局陳列するだけになりました。

 

青山さんのコラボレーションバッグは2点、実物をみたときには一気に心拍数があがった、見事な出来栄え。イラストの主線に金糸で刺繍がほどこされていたり、ワイヤー製のバラが縫い付けられていたり、いくえにもレースがかさなって、ビーズがちりばめられていたり、どれだけの手間と時間がかかっているのでしょう。そしてなにより、そんな姫姫しい(なんて言葉はありませんが)モチーフが、少年がもつような肩掛けのメッセンジャーバッグのような仕立てのバッグになっていることが嬉しく、「こんなバッグみたことないでしょう!」と自慢して歩きたい気分です。もっともこれから6日間、自慢しつづけるわけですが。結局これには値段がつけられず、最終日に私とchimmieさんが頂いてしまうことになるのですが…(欲しがって下さったかた、本当にすみません)。

 

あれもこれも、並べてみれば結構な数のものをこしらえていて、もちろん心残りはあるけれど、当初思い描いていたものはなんとかほとんど実現させることができたことは驚きです。あらためて、一人ではできなかったなあとしみじみ思います。

 

そんなことを思いながら、ようやく思い切って(これでもやはり思い切りが必要なのです)ドレスに着替え、カツラをかぶってみると、ああ案の定動きにくいことこの上なしです。しかもガラスごしに朝の通勤中の人たちとうっかりすれば目があいそうになります。私はいいけれど、相手は一日をなぞにつつまれて過ごさなくてはいけなくなるので、できるだけ目立たないところにいなければ。

 

そのとき突然、ドアを叩く音。どうやら出なくてはいけない!あわてて動こうとしたとたん、いきなりドレスのすそを踏みつけて、とっさに「後ろに倒れないとまずい!」と尻餅をつきました・・・。しょっぱなからこれです。

訪問者は宅配業者のかたでした。お世話になっている編集部からの、見事な花!これから続々、会場は花でうめつくされていくのですが、それにしても当日一番に転ぶとは・・・。しかしおかげで懲りたのか、ドレスで転んだのは後にも先にもこれ1回ですみました。

 

 

 


 

荒療治で目も覚めたところで、chimmieさんも到着。完成したお菓子に大騒ぎしながらキッチンを整えるうちに、当日の助っ人として再びSさんや青山さんも来てくれました。いよいよ、本当にいよいよ、開場です。


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最終更新日 : 2010-09-09 14:37:36

初日、開幕

10時、いよいよ姫展の開幕です。

この猛暑で朝からお客様は汗だく、ご来場されたらまずは冷たい薔薇緑茶をサービス。これはことのほか皆さんに喜んでいただけました。chimmieさんが入手した薔薇のつぼみと緑茶のブレンドは、水だしとは思えない香りの高さなのです。

表の扉には「ご自由にお入りください」と書いた大判のポスター。SさんのアイデアでDMをいれるポケットをつけました。これは集客効果抜群で、追加するたびになくなって、このDMを手に「気になったから…」と戻ってきてくれるお客様たちも。イラストを全面につかってくれた阪本さんにも感謝感謝です。

嬉しかったのは、お昼やすみに近所の会社のOLさんたちが、お財布とIDカードを片手に「顔はめ」めあてでやってきてくださったこと。結局2日続けて塗りえをしに通ってくださるかたたちもあらわれました。

初日にはお休みだった島中さんに、それをお話したところ、「近所のOLさんが入ってくれたことなんてなかったんじゃないかなあ」と言われたときには、思わず胸の中でガッツポーズしました。

 

初日はやはりご来場者が多く、完全にスタッフとして働いてくれる友人たちの接客のうまさにも感嘆することしきり。ぬりえはお子様にも大人にも好評で、思った以上のかたが長いこと「はまって」くださいました。それから意外と盛り上がったのが仮面。ひとつつけてみると、思いのほか似合うというので、皆さんひとしきり全部つけてみては写真を撮ってくれます。これがガラスごしにみえるので、また通りすがりのお客様の興味をひくという、なかなかの好循環。

 

当の私はというと、なにしろトレーンの長いドレスをひきずって歩いているため、お茶をだそうとか何かをすすめようとすると「ああ、私がやりますから動かなくていいです」と気をつかわせる始末で、文字通り何もできない姫様状態です。でもこの姫様装束のおかげで「わあ、姫がいる!」と皆に喜ばれて、気分はテーマパークの人気キャラクター。別に何かのコスプレではないので、「姫」というアイコンの強さをまざまざと実感することになりました。どこのイラストレーターが、自分の個展にたまたま入ってくれた見知らぬ人に、「一緒に写真とってください」「撮らせてください」と言ってもらえるでしょうか・・・いや、有名作家ならもちろんあるでしょうけれど。

子供、特に小さい女の子にはやはりドレスが大うけで、ずっと後ろにくっついて、結婚式の子役よろしくドレスのすそをかかえて歩いてくれるボランティアちゃんまで登場しました。女の子は小さくても、目ざとくネイルアートやアクセサリーをみつけてしげしげと眺めるのです。普段甥っ子ばかりみている自分には新鮮です。

 

多忙な中を駆けつけてくれた、お世話になっている編集さん、イラストレーターのお友達、学生時代の友人、ネットで知り合った人、そしてたまたま通りかかって吸い込まれてくれたはじめましてのかたたち。たくさんの方にご来場いただき、初日はあっという間に過ぎていきました。


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最終更新日 : 2010-09-09 09:18:45


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