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個展をしたくなったわけ2

 

ありがたいことに、仕事を始めたころから描き続けていた、懐かしい少女漫画風のイラストが、最近の流行と重なり、一部の方々からは「白ふくろう舎=お姫様っぽいイラスト」という認識をいただきはじめています。

 

もともと世代的に好き、ということもあるのですが、いつ頃からか、瞳キラキラのこの画風が、「面白いもの」「昔懐かしいもののパロディー」としてばかり扱われることに対し、少し残念な気がしていました。もちろん、純粋にこの頃の少女漫画が好きという方も多いのですが、雑誌や広告での扱いは、やはり「目がすごく大きくて何かというと大粒の涙をこぼし、デッサンはやや狂っていて、額に縦線とかショックをうけると白目になるという独特の表現がおもしろい」という、笑いやインパクトをねらったものがほとんどに思えて。

 

でも今あらためて子供の頃みていた漫画やイラストをみると、その絵としての魅力や技術の確かさ、そして何より表現としての新しさに、目を見張る思いがしました。

 

「少女漫画」の持つ独特の画風で、今を生きる女の子を描いてみたい。

そして、レトロなあしらいとしてでなく、雑誌や広告の中心をはれるようなイラストを描きたい。

 

数年前からぼんやりと考えていたことが、ようやく言葉になってかたまってきました。

 

そう、数年前から、というより意識としてはもっと昔から、そんな風に感じてはいたのだと思います。

ただ悲しいことに、自分の技術も、意識もそこまでなかなか追いついてこなかった。いまだに思い描いていたイメージのイラストは描けていない。この個展が、集中してその方向を探る、いいチャンスになるかもしれない。

 

さらにこのころ、今までの流れでは難しいだろうと思っていたような媒体からの発注や、新規の分野からの依頼があったことも、気持ちを後押ししてくれました。折角冒険してくださるクライアントがいるのなら、それに応えたい。

 

少女漫画の表現で、お姫様を描いて、そこに「自分ならでは、現代ならでは」のものを盛り込んでいこう。

個展のテーマは、「姫」に決まりです。


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最終更新日 : 2010-09-09 04:41:55

姫様考

個展のテーマは姫。

 

それも、頭をすごく大きく結った姫にしよう、と思いました。

少し前から、ネットなどで「盛りヘア」などとよばれる、独創的な髪型が話題になっていました。頭を噴水みたいに大きく盛りたてて、お花を飾ったり、果ては鳥かごまで載せたり。

そんな写真を目にして、びっくりしただけでなく、とても面白いと思い、そして「現実のほうがイラストよりも”すっとんで”いる!」という気持ちになって、ちょっと焦りのようなものを感じたものです。

 

仕事をはじめた頃、いわゆる「ギャル雑誌」とのご縁が多かったこともあり、それまでまったくなじみのなかった「ギャル文化」のようなものにずいぶんと接する機会が増えました。

その頃は第何次だかの「マンバブーム」などもあって、昔は「なんでわざわざ可愛い顔を台無しにするんだろう」としか思えなかったあのメイクが、だんだん面白くなってきたのは、単に慣れたからではなかったと思います。

 

普通メイクやファッションといったら、もちろん自己表現もあるでしょうが、対人コミュニケーション、ことに異性へのアプローチが土台になっているもの。けれどマンバだの盛りヘアだのというのはそういう次元を軽く超えています。かといって、あの不可思議なメイクをしているギャルたちが、何か強烈な、たとえば「男性うけする女性を演じることへのアンチテーゼ」とか、そういう意識でやっているわけではありません。

面白いから、自分たちが楽しいから、イケてると思うからやる。それがどんどんエスカレートする。

 

その「楽しいからエスカレートしてしまう」感じは、おそらくロココのあの恐るべきかつらや、花魁の頭などでも同じだったのではないかと思います(バブルの時代の肩パッドや立ち上がる前髪も似たようなものでしょう)。

「だって楽しいじゃない」という、朗らかな明るさは、姫様と現代女子とをかわらずつなぐパワーのようなものに思えて、それがなんだか好ましくほほえましい。

 

さらに、エスカレートして、いきつくところまでいった目新しく奇抜なファッションは、その片鱗を少しずつ「一般の人たち」に溶け込ませて消えていくので、ギャル雑誌に一時期ほどの派手なメイクがなくなった一方で、学生やOLむけの雑誌が少しギャル寄りになっていたり、つけまつげなどが割と一般的になっていったりして、今の女の子たちは全体的にメイクもファッションも「ちょっと派手」なようです。

 

 

そして、長いまつげ、くるくる巻いたりゆるふわにして少しボリュームをだした髪、フリフリしたシフォンのワンピース、そんな格好が「一部のごくごく可愛くて、夢見がちな女子」のものではなく、一般的に受け入れられた…その姿をみると、まるで「昔あこがれた少女漫画の中の主人公そのもの」のようで、なんだかいい時代だなあ、今の子たちは皆本当にお姫様みたいだなあ、と思っていたのです。

 

ただレトロな懐かしいお姫様を偲ぶのではなく、今の女の子たちこそが「あの憧れのお姫様」なんだ、…そんな気持ちで、姫展の準備ははじまりました。


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最終更新日 : 2010-09-09 04:44:25

作品をつくろう

 

会場とテーマは決まったものの、気がつけばあまり日数もなく、通常の仕事は平行しながらとなると、できることは限られてくるのですが、やってみたいことはいくらでもありました。

 

まず何より絵を飾らなければはじまりませんが、今回こだわったのは、仕事ではなかなか描けない手描きの作品を飾ること。折角印刷物でなく原画をみていただける機会なので、ここは妥協せずにがんばろうと思いました。

水彩をつかったカラー作品と、昨年から少しずつ描いている、シャープペンシルによるモノクロの作品。

どちらも頭をこんもりと盛った姫です。サイズもいつもより少し大きめに描こうと思います。

 

さらにイラストは、原画だけでなく、雑貨やアクセサリー、バッグなどに展開して、姫イラストの可能性をもっともっと感じてもらえるようにしたい。できればバッグは、既製品にプリントなどで済ませず、ちゃんと作家さんに頼んで、それ自体が作品として力を持つものにしたいところです。

 

それから、とにかく来場してくださった方が楽しめる場所がほしいので、前から「欲しい」といって頂いていたぬりえを作って、実際に塗ってもらえるコーナーを作ろう。

もし余裕があれば、イラストのスタンプも用意して、好みのエコバッグなんかも作ってもらえるようにしたい。

 

いっそ来てくれた人自身が展示の一部になってしまう、そんなしかけがあっても楽しいかもしれない。舞踏会のような仮面を作って、会場にいる人はみんなつけてもらうのはどうだろう?

 

イベントごとでは、おみやげにちょっとした買い物もできるといいから、物販コーナーもほしい。これまでにも時々作ったようなメモ帳や、ノート、バッジのような、子供のお小遣いでも買えるもの。

 

惚れ込んだカフェコーナーにはお菓子、それもどうせならこの姫展用にこしらえた特製のお菓子がほしい。おみやげにもできて、その場で食べることもできて、絵をみながらお茶でひとやすみできたらいいな。

 

考えれば考えるほど、アイデアは沸いてくるものの、いったいこれがどこまで実現可能なのか。まともにスケジュール表やリストにおとしこむと、あまりの無謀さにやる気がうせてしまいそうで、結局まっさらなノートに思いつくままメモだけ書きなぐって、なし崩しに作品作りがはじまりました。


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最終更新日 : 2010-09-08 09:45:24

ひたすら描くのみ

 

何はさておき、展示できるイラストがなければはじまりません。モノクロの作品は数点あるのでこのまま増やしていくとして、カラーで満足できるものはなく、一から描いていかなくては。それができてからDMやフライヤーをつくることになるので、のんびりもしていられません。

 

後々メインとしてつかうことになる写真のイラストが、一番はじめに着手したものですが、この段階の日付をみると6月10日。配布物などは1ヶ月前にはできていてほしいことを考えると、まったく余裕も何もないなと、今ふりかえってギョッとします。でもこのころはまだそこまで切羽詰っておらず、久々の水彩が楽しくて、でもなかなか思うようにしあがらなくて、毎日少しずつ描き進めていきました。


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最終更新日 : 2010-09-08 09:51:37

お姫様なバッグ

肝心のイラスト着手はかなりギリギリでしたが、自分でやること以外はもう少しはやくはじめていました。

 

イラストをつかったコラボレーションバッグ。

 

もともと自分のイラストをつかったバッグが欲しくて、業者に依頼してプリントした革のトートなどがあったのですが、今回はテーマの世界観にあわせて、完全にオリジナルな作品が欲しいと思いました。

でも、バッグ作家さんに知り合いはいないし…と考えたところ、いえ、幸いなことに私にもいました。この方に依頼してみたい、そしてまったく知らない仲ではない、という人が。

 

西荻窪に、いわゆるレンタルボックスの発祥の地である「ニヒル牛」「ニヒル牛2」というお店があるのですが、ご縁があって数年前からそちらにちょっとした小物をおいたり、イベントをさせていただいたりしていたのです。その店にはいわゆる手芸品の域をこえた、個性的で高い技術をもつ、いろいろな作家さんがいて、カフェの常連でもある私は知らないうちにかなりの方と顔見知りになっていました。

 

今回、バッグの製作を頼んでみたいと思った青山由華理さんも、人気のバッグ作家さん。彼女の作るバッグは主に布製で、A4くらいのものは楽に入るとか、肩掛けができるとか、芯がしっかりはいっていてつかいやすいとか、個人的に「こんなバッグが欲しいな」というポイントをクリアしつつ、とてもかわいいので、前から気になっていました。

 

今回バッグを作るなら、いかにも姫が持ちそうなパーティーバッグではなく、普段使いにつかえるような実用性がありながら、でもちゃんと姫!という、あまりなさそうなバッグがいいなと思ったのです。あんなつかいやすいバッグを作っている青山さんなら、きっとわかってくれる。でも、他人のイラストと世界観を表現するようなものを、彼女がひきうけてくれるでしょうか?

 

不安と期待を抱えつつ、彼女の連絡先を教えてもらおうとむかったある日のニヒル牛で、バッタリその本人と遭遇、これは幸先のいい偶然です。それからメールでやりとりをし、思った以上に快く彼女が引き受けてくれ、最初の打ち合わせを吉祥寺のカフェ(写真、カフェゼノン)でおこなったのが5月の上旬。

 

打ち合わせで「こうしたい、ああしたい」と私がいうのを、青山さんが的確に理解してくれて、二人でどんどん話がふくらんでいき、時間も忘れて話し込んだ高揚感がありありとよみがえってきます。その後、布をお渡ししたり、一緒にピンとくる材料や素材を買出ししたりするたびに、今まで一人で作ろうと思っていた世界が、言葉のやりとりからどんどん明確になり、さらに広がり、生き生き色づいていくのは、本当に嬉しい経験でした。

 

とはいえ肝心の製作は青山さんに丸ごとお願いするしかありません。デザインもふくめ、まるっきりおまかせしてしまった私は、彼女の苦労もしらずに「これで安心」と、できあがりまでひたすらワクワクして待つことになりました。


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最終更新日 : 2010-09-08 13:07:34


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