閉じる


<<最初から読む

38 / 42ページ

 昼休みに、事務室の前を通った時にこっそり中を覗いた。斎藤さんは事務室内にいた五十代ぐらいのおじさんと楽しそうに話していた。すると突然、おじさんはさりげなく、誰にも気づかれないような角度で斎藤さんの背中を下から上へそっとなぞっていった。その指の動きで、着ていたブラウスに少しだけ皺が寄る。斎藤さんは嫌がらない。顔を上げておじさんを見る。その目は子犬が飼い主を見るように優しい忠誠心で満ち溢れていた。僕は一瞬で二人のただならぬ関係を感じ取った。
 何だか嫌な気持ちで授業を受けていたら、直紀が小さく丸めた紙を投げてきた。開くと、「放課後、将棋部の部室に来い」と書いてあった。

篠原がたまり場に来なくなってから、放課後に部室に集まるという習慣は自然消滅した。久しぶりに訪れる将棋部の部室は、もうすでに電気が点いていて、直紀が先に来ているのだと思った。

驚かすつもりで思い切りドアを開けると、
「きゃっ」
 中にいる人がそう叫んで振り返った。さらさらの長い髪が揺れた。
「え、何で安田がいるの?」
「坂下くんに相談したいことがあって、部室を貸してもらったの」
「俺に?」
 安田は、二人きりなんて緊張するねと言いながら、胸に手をあてた。その膨らみをあえて見ないように注意していると、
「言えるまで少し違う話してもいいかな」
 と言って、昨日見たテレビ番組の話や教師の話、好きな漫画の話など他愛もない話を始めた。狭い部室の中で、パイプ椅子に座り、長机を挟んで話しこんだ。僕が置いていった洋楽のCDをかけてどの曲が良いか説明していると、安田は嬉しそうに僕を覗きこんできた。顔が近付くと、嫌でも頭の中に柔道着がちらついて、思わず体を引いた。
 いつの間にか外は真っ暗になっていて、昇降口の閉まる時間が近付いていた。
「そろそろ話し始めないと、昇降口が閉まったら下靴に履き替えられなくなるよ」
 安田は肯いたけれど、何も言わないまま部室の窓を開けて外を眺めた。少し身を乗り出す。スカートが尻の膨らみの方へとずり上がっていく。太股の裏側に小さなほくろを見つけたとき、僕は何だか誰も知らない安田の秘密を見てしまったような気がした。きっと安田も知らない。もしかすると篠原だって知らないかもしれない。僕だけが知っている安田の姿のような気がして、胸の鼓動が激しくなった。
 安田は窓を閉めて振り返り、「もう少し」と言った。昇降口の閉まる三分前になっても、まだ話を始めない。僕は痺れを切らしてしまった。
「もう話さないなら、俺帰るよ」
 立ち上がろうとした時、安田が突然腕を掴んだ。
「待って、行かないで」
 ぎゅっと握られた女子の小さくて冷たい手の感触に戸惑っていると、
「私、母子家庭で家にお母さんしかいないの」
 と真剣な目を向けて話し始めた。


 時計の針が昇降口の閉まる時間を過ぎた頃から、何だかもうどうでもよくなって、次は終バスの時間を考えていた。
 安田の話は、つまるところこういうことだ。母子家庭で母親は働き詰めでほとんど家にいないけれど、しつけは厳しく門限を守らないとぶたれることもある。そこから逃げ出したいと思っていた時に、篠原から告白されて付き合うようになった。あまりにも体ばかりを求めてくる篠原に嫌気がさしている。しかも二人だけの秘密だった、視聴覚室での密会まで直紀に話してしまう篠原に失望している、と。まあ、そんな感じだった。
 安田の言い分もわかったし、思春期の男子として篠原の気持ちは痛いほど分かる。むしろ羨ましくさえある。ただ、僕に相談されても困ると思った。安田の真剣な目は、安田の存在すべてが僕にかかっているような気にさせて、何だか恐ろしいもののように思えた。

しかし、ここで興味のない振りをすることは、女性をよりヒステリックな状態にすると母親から十分に学んでいるから、どんな話をされても聞き流して丸くおさめようと思った。
「篠原は良い奴だよ。安田のことが好きすぎて、今ちょっと変な状態になってるだけだよ」
 安田は少し不満そうに口をつぐんだ。何も言わずに立ち上がると、机の周りをゆっくり歩いて僕へ近付いた。隣に腰掛けて両手をかぶせるように握った。
「坂下くんなら分かるでしょ、私の気持ち。……もう、家に帰りたくないの」
 心の中で突風が吹いたような気がした。突然、窓の外の雨の音が勢いよく耳に飛び込んできた。いつから降り始めたのだろう。その雨は少し前からその調子で窓を叩いていたのかもしれないけれど、僕にはこの瞬間に世界が見えたかのように、強くいろんな音が入ってきた。激しく降りつける雨粒のように、僕の腕にぷつぷつした湿疹のようなものが一気に浮かんだ。
 朝思ったことをもう一度強く意識したのだ。僕の家は母子家庭だ。だけどそれを一度も不幸だと思ったことはない。誰かが僕の暮らしや、僕自身を惨めに見ていたとしても、僕は僕なんだ。僕は惨めなんかじゃないし、僕は全てを母親のせいや育った家のせいになんてしたくない――
 そう思うと、頭の中に一気に血が上って、安田の顔がぐらぐら揺れているように見えた。口から言葉が溢れだした。
「安田の言ってることも、状況も分かったし、同情だってする。でも、俺と安田は同じじゃない」
 ぽかんとしている安田の手を振り払った。
「俺は家に帰る」
 部室を飛び出した時、突然人にぶつかった。僕は走り出していて、よく見えなかったけれど、おそらく直紀だった。どしゃぶりの家路を上履きのまま走る。走りながらずっと安田のことを考えていた。安田は僕に何を求めているのだろう。母親や貧乏な家庭以上に僕に何を背負わせようというのだろうか。薄い布切れはすぐに浸水され、足を踏みしめる度にぐちゃぐちゃと音が鳴った。


 学校になんて行きたくないと思った。朝なんて来るな、とどんなに念じてもいつもときっかり同じ時間に目覚まし時計がけたたましく叫び、朝が来る。昨日あんなに雨が降ったのだから、せめて今日もどんよりした曇り空であってくれたら自然と学校に行ってやるかという気持ちにもなれたのに。そう思っても心とはミスマッチの夏らしい快晴の空が広がっている。そんなものなのだ。思っているとおりに物事は進まない。
 安田と顔を合わせるのが辛い。そう思っていたら、彼女は欠席だった。昨日あの後家に帰ったのだろうかと少し気になった。
 昼休み、人気のない中庭の脇に直紀を呼び出した。昨日のことを聞くためだ。
 直紀を待っていると、小さな話声が聞こえる。校舎の壁の裏側に人がいるようで、僕は息をひそめて壁際に耳を寄せた。聞き覚えのある声だ。斎藤さんとクロだ、と思った。
「これ、お守りだから」
 大会に向けて、斎藤さんが手作りのお守りを渡しているようだった。
「ありがとう」
 クロは照れたような言い方をした。心臓の鼓動が速まり、僕はすごく悪いことをしているような気がしてきた。
「さいちゃんは、今でもあいつのことが好きなの?」
「また、からかうんでしょ」
「そういう恋愛、もうやめなよ」
 僕は自然と頭の中で、あのおじさんと斎藤さんの姿を重ねていた。斎藤さんは明るく言った。
「白井くんが大会で頑張ったら、私も前に進める気がする」
 クロはその言葉に対して何も言わなかった。自然と話題が変わると、二人の小さな笑い声がし始める。
 その時、ようやく直紀が現れた。クロたちに気付かれないように場所を移すと、直紀に訊ねた。
「お前、昨日将棋部の部室の前で俺とぶつかったよな?」
 直紀は何も答えなかった。目を合わせようとさえしない。
「安田ってあの後ちゃんと帰った?」
 直紀は下を向いたまま、口を開かなかった。
「直紀」
「やめてくれよ」

肩に触れると、強い力で振り払われた。
 クロが一人で通りかかり、僕たちのいつもと違う雰囲気を感じたのか、割り込んできた。
「お前ら、何の話してんの?」
 それを無視して、直紀は吐き捨てるように言った。
「安田は翔に助けを求めてたのに、何で置いて逃げたんだよ」
「別に、逃げてなんかないよ。大体、何で俺なんだよ。直紀が話を聞けば良かったじゃないか」
「俺が聞けるならそうしたかったよ」
 僕は直紀の方を見つめていたけど、直紀は視線を落とし、目を合わせないまま話を続けた。
「お前が走って逃げたから、俺はあの後すぐ部室に入ったんだ。安田はぼろぼろ泣きじゃくってた。だけど、言われたんだ。俺じゃだめなんだって。翔じゃなきゃ、理解し合えないんだって」
「安田が俺に何を期待しているか知らないけど、俺は安田とは違う」
 その時、クロが言った。
「直紀は安田のことが好きなら、篠原とのことをからかうんじゃなくて、お前が話を聞いてやるべきだったんじゃないか?」
 僕の肩を持とうとするクロに対して、直紀はじろりとにらんだ。
「クロは何も分かってない。安田が求めていたのが篠原だと分かったとき、俺じゃなかったって苦しかった。将棋部の部室を貸してと言われた時、俺に助けを求めてると思ったよ。そしたら、今度は翔だ。俺と翔と何が違うって言うんだよ。生まれた境遇が違えば分かりあえないなんて、俺にはもうどうしようもできないじゃないか。自分の努力じゃもう越えられない壁なんだよ」
 直紀は激しく拳を震わせながら言った。
「翔は責任を取りたくないだけだろ。ただ、安田のことを重荷に思ったから逃げたんだ」

痛いところを突かれた。僕と安田が母子家庭でつながっているなんてそんなのおかしいと思ったけれど、実際は安田が家に帰らないのを手助けするほどの重荷を背負えなくて、無責任に逃げたのだと気づいた。安田の全てが僕にのしかかるのが怖かったんだ。何も言えない僕をかばってクロが言った。
「直紀はいつもそうだ。自分が向きあわなくて、他人のせいにばかりすんじゃねえよ」
「クロには俺の気持ちなんて分からないよ。クロはあの副顧問とべったりじゃないか。俺は誰にも求められない。誰も俺のことなんか相手にしてくれない」

すると、今度はクロが今にも直紀に殴りかかりそうな勢いで言った。
「さいちゃんと俺の関係の何が分かるって言うんだよ。直紀は自分を卑下して、無いものねだりしているだけじゃないか」
 血が頭に集中して、周りが揺れ始めた。直紀とクロの言い合いを見ながら、届くか分からない声を必死に振り絞った。
……俺は、直紀みたいに面白くて頭の良い奴じゃない。クロみたいに家が金持ちで水泳のスキルがあるわけでもない。俺なんて何やっても普通で、何やっても人並みだよ。誰にも期待なんてされないし、俺自身だって期待もしてない」
 息を吸い込んだ。何だか鼻から鉄錆のような匂いが抜ける。
「母子家庭で貧乏で、本当は進学なんてせずに働いた方がいいってことも分かってる。だけど、その境遇を同情されるのだけは嫌だ。俺は安田とは違って、この境遇を否定も肯定もしてない。だって、これが俺なんだから。空気とか道とか川とか、そんなのと同じ。もう気付いた時からそこにあって、それが俺そのものなんだよ。そういうことの責任は誰かに委ねるもんじゃないだろ?」

直紀はうつむいたまま黙って聞いていた。

「正直言って、俺なんかより二人の生まれた環境の方が良いに決まってる。本当は羨ましいよ。俺だって俺を否定しないために必死なんだよ」
 言葉が詰まった。思わず、目から涙が出そうになって口を強く結んだ。すると、クロが言った。
「俺だって、好き好んで俺になったわけじゃない」

 仁王立ちになって、クロは自分の片腕の筋肉を確かめるようにぐっと掴んだ。

「小さいときから期待されて、だからみんなの反対することばかりやってきた。高校だって親から勧められたところには行かなかった。部活だって本当はやるなって言われた。だけど、無視して水泳を始めたら、思ったより良い成績が出て、そしたら手のひらを返したように周りがいきなり部活のことを認めて期待し始めた。みんな勝手なんだ。でも、期待されたら俺も頑張っちゃうんだよ。条件反射なんだ。期待されることがこんなに息苦しいと思ってるのに」

 クロがこんなに自分のことを語るのを初めて見た。荒げる息をぐっと吸い込んで、クロは口を開いた。

「さいちゃんだって、俺に期待をかけてるのは単なる逃げだよ。別に俺の才能を本気で信じてるわけじゃない。さいちゃんは、仕事もそうだけど、うまくいかない恋愛からも逃げて、俺を何かの代わりにしてるだけなんだ。俺だってもっと生まれるのが早かったら、出会うのがもっと早かったら、さいちゃんが俺のことを恋愛対象として見てくれたかもしれない。こんな単なる暇つぶしみたいな関係じゃなくて。でも、全部仮定で、全部無いものねだりなんだ……」
 そう言うと、突然クロが腕を目にあて、鼻をすすり始めた。僕も直紀も、責任感が強くていつも僕たちのことを守ってくれていた強いクロがそんなふうに泣くのを見たのはおそらく初めてで、少し面食らってしまった。斎藤さんの気持ちや家を継ぐ者としての期待を一身に背負うクロがずっと輝いて見えていたのに、その重さが僕には全然分かっていなかったということにようやく気づいた。声を押し殺して泣くクロは、長い間いろいろな人からかけ続けられた期待をはねのけることなく我慢してきた思いが溢れたようだった。
 しかし、僕たちはその後の修復方法を知らなかった。交わらない思いをぶつけあっただけで、喧嘩した、というのとは少し違う。これまで自分の思いを隠したまま付き合ってきて、本当の思いを伝え合ってこなかったのだ。だからうまく喧嘩すらできなくて、ただ平行線の言い合いに終わってしまった。だけど、これからお互いの話を掘り下げたところで、変に気をつかって話せないということも分かっていて、僕たちはもう互いに積極的に関わることをやめてしまった。そして、そのまま夏休みに入った。




 その日、朝早く目が覚めた。することもなくぼんやりとテレビを見ていると、電話が鳴った。

斎藤さんからだった。
「今日、白井くんの大会の日だよ。坂下くんは応援に行くよね?」
 僕の体は今日がクロの大事な日だってことを覚えていて、だから朝早く目が覚めたのだ。でも、覚えていることと行動することは違う。
「いえ、行きません」
 お互いに深い溝にはまってしまい、そこから抜け出せないままだった。受話器を通した斎藤さんの声がざわめきに時折消えてしまう。
「私も行けないの」
 発車のベルのような音がする。
「私ね、みんなが夏休みに入ってすぐ、学校辞めたの。実家に帰って、結婚でもしようかなって思って」
 僕は想像した。斎藤さんがホームから僕に電話をしている様子を。夏休みの間にひっそりと仕事を辞めたにも関わらず、こうして僕に電話をしてきている。きっと誰かに話を聞いてほしかったんだ。それぐらい斎藤さんは孤独のなかで生きていたんだ、と思った。そして、その斎藤さんに期待をかけられて、海原に両手を広げて飛び込んで行くクロのことを想像した。
 斎藤さんが息をのみ込む音が聞こえたような気がした。少しの沈黙の後、溜息といっしょにこう吐き出した。
「年をとると、いつの間にか他の人ばかりを気にするようになってて、自分の人生が後回しになってたのかもしれない」
 そして、もう一度ベルが鳴った。
「聞いてくれて、ありがとう」
 電話を切ると、僕は自転車に飛び乗り、がむしゃらに走った。

土手の陸橋を通る特急電車に斎藤さんが乗っているのだと、なぜだか分からないけどそう思った。立ちこぎしながら、朝の高い陽が差す陸橋を特急電車が通るときに叫んだ。
「斎藤さん!」
 精一杯、自転車のペダルを前に押した。土手に生える草の朝露や川の水面が朝陽を反射してきらきらと光る。陸橋も、特急電車の外面の金属も、全てが朝陽に負けまいと力いっぱい光をはね返している。
「斎藤さん、もう誰かのなかで生きるのはやめてください。自分の人生を生きてください」
 大きな声で叫んだ。力強い風が口いっぱいに入って来る。それでも僕は斎藤さんの名前を叫び続けた。そして、特急電車が見えなくなると、そのまま全速力でクロが泳ぐ大会のプールへ向かった。
 

それから十年以上過ぎて、僕たちはあの頃の斎藤さんと同じ二十九歳になった。あの高校時代以来、もう全員が一緒につるむことはなかった。みんなばらばらの大学に進学して、直紀とクロは地元を離れた。地元に残った篠原とは、全く連絡を取り合っていない。偶然会った知り合いから、病気で長く入院しているという話を聞いたが、その後のことはよく知らない。頭の良かった直紀は、同じ大学で知り合った彼女と卒業後すぐに結婚して、一児の父親になったと聞いた。でも、一度も地元に帰らないから、奥さんとも子どもとも会ったことはない。クロとは、帰省する度に呼び出されて飲んでいたけれど、それもいつの間にか数年に一度くらいのペースになってしまった。クロは白井不動産を継がず、別の会社に就職した。本人は否定したけれど、僕にはわかっている。家を継ぐための自己研さんをしているに過ぎないのだ。クロは最終的には期待に応える。そういう人間だ。
 そして僕は、地元の大学に進学して、そのまま地元の小さな会社に就職した。身の丈に合った人生だ。
 この年になって気づいた。きっと斎藤さんは本気で僕たちに期待なんてしていなかったんじゃないかな、と。あの時、僕たちは自分の力で何かが変えられると本気で思っていた。危うい自己意識の上に立っていながら、無責任なくせに大人ぶった行動ばかりする。どちらにも進めない、単なる成長過程の人間だ。そんな奴らに何を期待するのだろう、と今は思う。
 ただ、いまだに朝のきらめきを見ると、胸が締め付けられる。自分が輝けないなら、せめて輝く他の光をはね返す人でなくてはいけない。はね返してでも自分で輝く努力をしなければならないのだ。何もせずに誰かに期待するのではなく、自分で光をはね返す力が必要だと感じる。

そんな時、必ず思う。
 僕たちは、ちゃんとあの時代に生きていたんだな、と。

(終)


おまけ短歌/しろくま

おまけ短歌   しろくま

 

 

 

透明に色を溶かした手に入る誰かだったら嫌いになれた

 

はつ夏の短編集よ傾いて当直室の本棚に立つ

 

さっきから何しているの?Fキーに触れれば海のにおいが満ちる

 

適切な温度を保つ絶滅種リストを抱いて眠りにつこう

 

一斉に光る階段 神様が見えても消えても全て間違い

 

真夜中の本屋の灯りはじめての世界を語る言葉のように

 

海沿いを車流れる初夏のしろくまみたいに不機嫌なかお

 

駅までは黙って歩くあなたって誰のものでもないふりをして

 

楽にしてくださいあなたにぴったりの靴下を編む四角い五月

 

王様の沈黙みたいな真夜中になにもないからなにもないから

 


この本の内容は以上です。


読者登録

星屑書房さんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について