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私の頭の中

いつしか時は過ぎて、寒い冬になったけれど

暗い部屋にうっすら光るデジタル時計はまだ夜を指していた。

わたしは今日もまた、この忌々しい過去から抜け出した夢を眠りの国で作り上げているんだと思う。

朝がやってきてしまうという恐怖を恐れて、太陽さえも冷やしてしまう。

彼が私に、と先程アロマキャンドルを持ってきてくれた。

それにそっとライターを近づける。

じわじわと暖かい香りが部屋包む。

何の香りか気になったが、知りたくはなかった。

知ってしまったら少しの安らぎが消えてしまうだろう。

ほんの少しの安心と寂しさが部屋の空気に混ざり合って

キャンドルは消えてしまった。

こんなはずじゃない。

必死にもがく私の周りは針山で、そのおかげで

頭の中の怪物達が成長し、私は頭でっかちになった。

思考と行動が釣り合わず、ここから抜け出せなくなっていた。

彼が帰ってくるまでは泣いてよう。

彼が帰ってくるまでは。


サリーとメリーは呪われた

サリーとメリーは、双子だった。

しかし、どういう訳か一人しかいなかったことにされた。

ということはどちらかが消されるのだ。

昔、双子は不吉なものとされていたんだって。

どちらかは殺されるのだ。

でも死にたくなかったので、なんとか生かしてもらおうと

頼んだところ、話の分かる大人が

「2人で都合のいいときに交代しなさい」

と言ってくれた。

サリーとメリーは仲が良かったので手を取り合って喜んだ。

なんでこのような話が出たのかというと

サリーとメリーは本当に顔も声も背も恰好も似ていたから。

おまけに性格も似ていた。

2人ともよく笑う子だったんだよ。

それに絵が上手で、いつも二人で交換絵日記みたいなのを

つけていたなあ。

その絵日記は2人だけの秘密で、誰にも知られることはなかった。

だって、二人の部屋のベットの下にいつも隠してあったから。

2人は、蝶や花、海、魚が好きだった。

いつも沢山の色をつかって幻想的な絵を描いていたよ。

でもね、2人は一人だから部屋に居る時の少しの時間しか一緒に

いれないの。だから2人でおでかけは一度もなかったし、

サリーが見た景色はメリーは見たことがない。メリーが見た景色はサリーは見たことがない。

そこで絵日記をつけることで、二人の記憶を共有できたんだ。

2人は交代を効率よくしていた。

サリーは文系が得意だし、メリーは理数系が得意だから

上手くバトンタッチをしていつも成績はよかった。

それなりに2人の個性はあれども、演技をすることで

周りに疑われることはなかった。

絵日記も2人とも似たような絵ばかりだったが、

17歳になったある日、サリーの絵日記が桃色になった。

メリーはすぐにサリーが恋をしたことに気づく。

そしてサリーの後をこっそりつけることになった。

2人が外に出てはいけなかった。

2人は1人だから。

サリーは、いつも病院に通っていたのだ。

メリーはおかしいと思った。

サリーはどこも悪くないもの。

サリーは、もちろん怪我だって病気だってしていなかった。

ある病室にいくためだった。

そこには、独りの青年が居た。

前髪は少し長くて肌が真っ白だ。

もう少しで消えてなくなってしまいそうだ。

サリーはその青年と笑い合っていた。

多分、愛し合っていたんだと思う。

メリーは、悔しかった。

青年に恋をしてしまったから。

サリーはメリーに言った。

「今日と明日は、私が外に出てもいいかしら。」

いつもは、何もない日は一日交代なのに。

メリーは嫌だと言い張った。

気に食わなかった。

サリーは、諦めてメリーと交代した。

サリーがその少年と会ったのは高校生になったばかりの

春のことだった。

いつも通る帰り道に、紙飛行機が落ちてきたので

拾ってみると桜の花びらと病院の部屋番号が書いてあったのである。

誰かが握りしめていたのかその花びらはもう千切れかけていた。

恐る恐る、病室に行ってみるとそこには

華奢な青年が眠りについていた。

桜の花びらが舞い込んできて、彼の頬に落ちた。

あまりに綺麗でサリーは息を飲んだ。

そして紙飛行機に桜の木を書き足して、

その日は帰った。

それからというもの、紙飛行機がまた落ちてくる。

紙飛行機に何か絵を描いて帰るという日々が続いていたが

それをいつも楽しみにしていた。

サリーがいつものように返事に絵を描いていると

「いつも上手だね」

と青年が言った。

彼女はどきどきして、顔が赤く染まってしまう。

青年はそれを優しく笑った。

サリーは家で待っている間、彼に贈る絵を描いた。

桜の木の下で二人で笑い合っている絵を。

メリーは、青年の病院に行ってみた。

やっぱり青年は眠っていた。

それで、彼に魚の絵を描いた。

そして彼にキスをした。

彼は、起きていたけど眠ったふりをした。

どうしてって?青年は感染症だったんだ。

もう余命がまもなく消える頃だった。

キスなんかしたらだめだった。

だけどね、メリーは知ってたんだ。

彼の病院に入院できると喜んだ。

しかし、その日のうちに青年はなくなった。

その空になった病室には、紙飛行機が二つ置いてあった。

一つは桜の花びらが沢山はいっていた。

一つは魚の綺麗な絵が描かれていた。

彼は知っていたみたいだね。

でもね、サリーもキスしようとしていた時があったんだ。

青年はさせなかったけど。

「呪いはこれで解けるんだ」

って言ってた。

メリーはその病院に入院したんだけど

少ししか生きられずに死んだんだ。

彼と同じ深い眠りについて。

サリーはメリーが死んだことを悔やんで

毎日毎日絵を描いた。

でもあるとき、ふと思ったんだよ。

本当に幸せなのはどっちなんだろうって。

考えてもそれは無駄だったよ。

だってもう交換絵日記はつけられないんだから。

昔、双子は不吉なものとされていたんだって。

どちらかは殺されるのだ。


この本の内容は以上です。


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