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 理想と現実に悩む刑事とひねくれた少年の話。

その少年は、母子家庭で母が大好きで大切にしてたんだけどある日、罪を被せられてしまう。

 その事件が終わったら、退職を考えている刑事がその事件の担当になった。

何を話しても、抵抗しない少年に違和感を覚えるけれど証拠がなに一つない。

刑事と少年は次第に打ち解けるけれど、タイムリミットはせまる。少年が犯人になってしまう。

 けれど、少年はそれでもいいと言い続けた。

  その前に少年は、死ぬという。 

 母のことを大切に思ってきたけれど、反対の態度しか取れなかったので、

自分が死んで保険金で母に生きてほしいって言ってた。

 刑事は止めたけど、  最後に少年は

 

 

 

「どれもこれも罠ってことなんですよ。 」

 

 

って言って飛び降りたんだ。


砂漠の砂

砂漠で一人女の子が居た。

それは夜の事だったんだけど

砂漠の夜ってすごく寒いんだ。

女の子はそれなのにワンピース

一枚で、でっかい月を眺めてる。

その姿がなんか絵になっていたから

まあ、その絵を描き始めたんだよ。

売れない絵描きはファンタジーな

世界が好きなんだ。

現実逃避ってやつ。

女の子はちっとも動かない。

絵を描くこっちとしては好都合だった。

愛用の鉛筆は、変な形に尖ってるんだ。

僕は彼女の近くに寄ってその表情を見よう

と試みたが、すぐにその足を止めた。

絵描きは感がいいんだ。

僕は下書きにかかった。

月を見上げる少女、希望を見ているかのような

きらきらした表情で、彼女を書き上げた。

もう何時間経っただろうか。

すっかり月は遠くへ行き、太陽がもうすぐ出てくる。

月も太陽もない無な砂漠はなんとなく

気味の悪い異世界のようだった。

白く、息もしにくい空間だ。

僕は、彼女にその絵をプレゼントする気だった。

もうすっかり彼女に夢中になっていた。

そして、絵を渡そうと、彼女に近づいた瞬間

僕は自分の愚かさに鳥肌が立ったんだ。

彼女は金属でできた、人形だったのだ。

しかも見ているのはどこでもない、ただの空。

僕はその絵を千切って、砂漠の砂にした。

彼女の表情は、本当に、夜が似合う。


子供ごっこ

 

君は僕を酷く嫌っていた。

それは何故かと聞かれれば僕が悪い。

 

君は、僕と同じ高校で

それは進学校だったんだけど。

 

いじめもあったし、僕が知らないところで

きっとたくさん事件もあったことだろう。

 

とにかく君のことを知るのも噂からだった。

それで首を突っ込んだ僕が悪かったんだ。

 

昔から、ヒーローになりたかった。

みんなに平和をもたらし、崇められたかっただけかもしれない。

 

でも、本当に君を助けたかったんだよ。本当に。

信じてほしいんだ。

 

それで、君が噂されてる内容と言えばもう

酷かった。君は犯罪者になっていたよ。

 

それで、その君と同じクラスになったね。

顔を見て、僕は驚いたよ。

綺麗だったから、背筋がピンと伸びていて

誰からも傷つけられないような強い膜がはってあった。

 

君を見つめると、君はいつも僕を睨んだ。

それでも君を知りたかった。

 

ある放課後君を見かけた。

歓楽街に歩いていく君を。

 

暗い夜にきらきら光るネオン。

星なんかもう見えない。

君はいつも以上におめかしをして

安っぽい光の中に消えていった。

 

その後ろ姿が綺麗だった。

死にそうな、助けてほしいと叫んでいるその

華奢な腕と、足。背中。折れてしまいそうで、綺麗だ。

 

僕は、その姿を見てから

学校で君の姿をいつも以上に目で追うようになった。

 

君が休み時間屋上で煙草吸っていることも知った。

その煙は君の寿命だ。

 

君に初めて話しかけた日は、その日だ。

「君、生きてる?」

と君の煙草を取り上げながら言った。

 

「かろうじて」 

そう言いながら、君は毒をもう1本取り出した。

 

「楽しく生きたいと思わないの?」

僕は怪訝そうに言う。

 

「それをできたら、私じゃないと思う。」

君は空を見ながら少し笑った。

 

「君を助けてあげる」

僕はそうとっさに言ってしまった。

 

この言葉が君の地雷だった。

 

君は血相を変えた。

 

「簡単に言うな、何様?」

「お前は私の頭の中を共有できるっていうの?」

「興味本位でするんなら最初からするな」

「人の人生まで背負えるの?」

 

このほかにもきっとたくさんの事を言われたと思う。

君を見ると泣いていた。

あんなに光らない涙初めて見た。からからの涙だ。

からっぽだった。もう水分を出せないくらい。

 

僕は君に、多分約3ヶ月付きまとった。

その時の僕は自分をヒーローだと思っていた。

可愛い君のために助けてあげてるヒーローだと。

 

1ヶ月目は、君に無視され続けた。

僕はそれでもめげない。

 

2ヶ月目は、君がだんだんあきれてきた。

それになんだか、ちょっと顔色が悪い時があった。

話は少ししてくれるようになった。

 

3ヶ月経ったある日

君は授業中に席を外した。

僕が追いかけると、君は泣いていた。

 

「嫌いだからもう近づかないで」

 

と言ってきた。

 

君は僕のヒロインなのに、

そのヒロインとハッピーエンドじゃなきゃ気が済まない。

 

告白をした。

僕は馬鹿だ、返事を言われたあとに告白だなんて。

 

君は、放課後、僕を生物準備室に連れて行った。

そこは、ホルマリン漬けされた生物だったものが沢山おいてあった。

君もこうなればいいのに。一生綺麗だよ。

 

君は制服を脱ぎだした。

腕や足に比べて、ほんの少しだけお腹が大きかった。

 

「妊娠してる」

 

君はそう言った。

 

「そう」

と僕は言った。

 

「君の子ってことにしてよ」

「どうして」

「助けるんでしょう」

「困るよ」

「誰の子かわからない」

「困るよ、無理だよ」

 

君は最後に「ヒーローって見苦しいわね」って言って学校を出て行った。

 

それから君の席は空っぽだ。

元気かな、とか考えることもあるけど

僕は正しい判断したんだと思うしかない。

 

君は自分の足で歩いていくんだよ。

 

っていう自己満足な自己完結的ないい訳ばかりついている。

 

君は僕をひどく嫌っていた。

それは何故かと聞かれれば僕が悪い。


何ドル

最近、娘が変だ。

あんなに明るい子だったって言うのに

いつからだか、めっきり会話しなくなった。

おまけに僕とは目もあわせようとしないんだ。

年頃なのはわかるが、あまり気分がいいものではない。

 

どうしたらいいんだろう、と頭を抱えて溜息をつきたいところだが

僕には時間がない。

 

医者には余命を知らされている。

タイムリミットは1年だ。

よく聞くあの病気だよ。困ったもんだ。

 

まあ、娘と言っても娘ではないんだ。

僕とは血は繋がらないらしい。

けれど、血など関係あるだろうか?

いやないだろう。

小さい子供が、離れて恋しくなるのは育ての親だ。

 

長い時間を共有した分だけ影響も大きいだろう。

 

そんな娘に一週間ぶりに会話を投げかけてみた。

 

 

「げ、元気か?」

 

 

完全に無視だ。

心が痛い。寿命が縮む気がした。

ここで結局僕は頭を抱えることになった。

 

僕の家は決して貧しくはない。

むしろ、裕福な生活を送っている。

 

そんな生活の何が不満なんだろうか。

 

広い庭にはバラのアーチがある。

これは死んだ嫁の手入れしていたもので

今となっては結構伸び放題に蔦が伸びて

アーチをくぐれるかどうかも危うい。

 

 

何を思ったのか、疲れているのか、

その棘のあるアーチに刺さりながらくぐった。

 

すると、なんともファンタジーな展開。魔女がいた。

 

しかしその魔女は非常に若く、

しかもあれだ、死んだ嫁に似すぎている。

 

内心、抱き着きたかったが

なんとなく我慢した。

 

我慢をしていると娘が魔女の前に現れた。

あ、そうだ。嫁の顔を知らないんだった娘は。

 

「何してるの?」

娘は栗色の髪を弄りながら言う。

 

「同情を買いますか?」

魔女は同情を売り出す。

 

 

すると娘は淡々と言う。

「私は全てを嫌悪していますが、

実際それを良いように利用するのも一つの方法だと思う。」

 

「特別に扱われたい?ハンデをもらいたい?」

魔女も恐ろしい程表情がかわらない。

 

「同情を買もらえるならば、高く買ってもらおうと必死なんですか?」

娘は生意気だ。

 

「そうよ。平等じゃないなら誰よりも可愛がられなきゃね。」

魔女は爪を噛む。死んだ嫁の癖だ。

 

「同情は買ってもいいけど、他人のことなんて解りっこないわよ。

自分と他人だけで人間世界は成り立っているもの。それでわかりもしない癖にと、ほざくのはやめて頂戴。もううんざり。」

 

娘は態度がでかい。なぜこんなにも口が達者になったんだろうか。

 

魔女はその同情の入った瓶を投げつけた。

その瓶のふたは魔女の手のひらにあり、中身は僕へとかかってしまった。

 

 

「あ」

 

「あ」

 

僕と娘は目が合う。

 

「同情を買うわ。何ドル?」

 

娘は座り込む僕を見つめた。


私の頭の中

いつしか時は過ぎて、寒い冬になったけれど

暗い部屋にうっすら光るデジタル時計はまだ夜を指していた。

わたしは今日もまた、この忌々しい過去から抜け出した夢を眠りの国で作り上げているんだと思う。

朝がやってきてしまうという恐怖を恐れて、太陽さえも冷やしてしまう。

彼が私に、と先程アロマキャンドルを持ってきてくれた。

それにそっとライターを近づける。

じわじわと暖かい香りが部屋包む。

何の香りか気になったが、知りたくはなかった。

知ってしまったら少しの安らぎが消えてしまうだろう。

ほんの少しの安心と寂しさが部屋の空気に混ざり合って

キャンドルは消えてしまった。

こんなはずじゃない。

必死にもがく私の周りは針山で、そのおかげで

頭の中の怪物達が成長し、私は頭でっかちになった。

思考と行動が釣り合わず、ここから抜け出せなくなっていた。

彼が帰ってくるまでは泣いてよう。

彼が帰ってくるまでは。



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