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天使の悪魔

大きな痣ができてどうやって隠そうか考えたとき、どうにも目立つ場所だったので、

もうどこもかしこも殴られればいいと思った。

もう、真っ黒になってしまえば、わたしは自分の影に溶けてなくなってしまえるような気がしたよ。

今になってみれば、あの辛い日々だって、狂ってしまえば楽だったのかもしれないのにね。

とにかく私は必死に自分の存在理由を探した。

だけど、私が居ない世界の方がお母さんだってお父さんだって傷つかないで済んだことに気づいた。

でも、わたしのことを愛してくれるお母さんがいて

わたしのことを毎日殴ってくれるお父さんがいて

わたしができたから、二人は結婚した。

わたしが天使で悪魔。

そして、わたしは二人を引きはがした。

ごめんね。

真っ黒になって溶けたいと今でも思ってる。

お母さんの胎内に戻してください。

ごめんね。


もしも話

 

 

 

ある日わたしは消える。

そしてわたしの存在を知る人もいなくなる。

 

 

 

 

 

わたしが消える前に、わたしのいない世界を

見せてもらえるそうだ。

少しの不安と期待を胸に、おそるおそる覗く。

 

 

 

 

すると先にわたしの存在が消えた母の世界が見えた。

 

 

わたしの母は、父とは違う男と結婚して裕福ではないが貧乏でもない

生活を一人息子と共にしている。

 

 

わたしの居たアパートとはまるで違う一軒家には、母とその家族の笑い声が小さく聞こえている。

寂しいけれど、幸せそうで本当に良かったなぁ。

 

 

 

髪の毛が痛んで薄くなり、沢山のアルバイトをして、

父の罵声を浴びて、ストレスを抱えて病気になってしまった母はどこにもいなかったんだ。

幸せになれたんだ。

 

 

少し息を詰まらせながらも今度は父の世界を見た。

 

 

 

 

父は、相変わらず美容院を経営しているがやはり儲かってはいないようだった。

それに恋人もいないようだが実家で暮らしていた。

祖父と祖母に大事にされながら毎日過ごしている。

 

 

 

すると、少し照れくさそうに「いつもありがとう」とプレゼントを両親に渡していた。

その顔は、男だけど、少し可愛らしかった。

 

 

毎日上手くいかない経営のストレスで子供に暴力をふるう父はいなかった。

毎日なにかに追われ、イライラする父もいない。こどもが嫌いな父もいない。

 

 

 

 

良かったなぁ。

 

 

 

本当に良かったなぁ。

 

 

 

 

よかったなぁ


3限目の科学の天使

あの子が飛んだ いつも笑ってたのに

あの子は羽がついてたんだ本当なんだよ

 

あの子が飛んだ いつも笑ってたのに

あの子は羽がついてた嘘じゃないさ

 

君は見てたかい?あの日の

3限の科学の時間に天使が来たんだ。

髪を揺らして。

 

 

あの子が飛んだ いつも笑ってたはず

あの子は羽がついてたんだ本当なんだよ

 

あの子がくれた 初めてだったんだって

あの子に羽をつけたんだ本当なんだ

君は見てたかい?あの日の

 

3階教室の窓に天使が来たんだ。

髪を揺らして。

 

 

さよなら さよなら さよなら

 

君は見てたかい?あの日の

3階教室の窓に天使が来たんだ。

髪を揺らして。

 

 

 

君は見て、高い あの子の

最後の場所に窓に天使が来たんだ。

かわいいだろ?


 

 理想と現実に悩む刑事とひねくれた少年の話。

その少年は、母子家庭で母が大好きで大切にしてたんだけどある日、罪を被せられてしまう。

 その事件が終わったら、退職を考えている刑事がその事件の担当になった。

何を話しても、抵抗しない少年に違和感を覚えるけれど証拠がなに一つない。

刑事と少年は次第に打ち解けるけれど、タイムリミットはせまる。少年が犯人になってしまう。

 けれど、少年はそれでもいいと言い続けた。

  その前に少年は、死ぬという。 

 母のことを大切に思ってきたけれど、反対の態度しか取れなかったので、

自分が死んで保険金で母に生きてほしいって言ってた。

 刑事は止めたけど、  最後に少年は

 

 

 

「どれもこれも罠ってことなんですよ。 」

 

 

って言って飛び降りたんだ。


砂漠の砂

砂漠で一人女の子が居た。

それは夜の事だったんだけど

砂漠の夜ってすごく寒いんだ。

女の子はそれなのにワンピース

一枚で、でっかい月を眺めてる。

その姿がなんか絵になっていたから

まあ、その絵を描き始めたんだよ。

売れない絵描きはファンタジーな

世界が好きなんだ。

現実逃避ってやつ。

女の子はちっとも動かない。

絵を描くこっちとしては好都合だった。

愛用の鉛筆は、変な形に尖ってるんだ。

僕は彼女の近くに寄ってその表情を見よう

と試みたが、すぐにその足を止めた。

絵描きは感がいいんだ。

僕は下書きにかかった。

月を見上げる少女、希望を見ているかのような

きらきらした表情で、彼女を書き上げた。

もう何時間経っただろうか。

すっかり月は遠くへ行き、太陽がもうすぐ出てくる。

月も太陽もない無な砂漠はなんとなく

気味の悪い異世界のようだった。

白く、息もしにくい空間だ。

僕は、彼女にその絵をプレゼントする気だった。

もうすっかり彼女に夢中になっていた。

そして、絵を渡そうと、彼女に近づいた瞬間

僕は自分の愚かさに鳥肌が立ったんだ。

彼女は金属でできた、人形だったのだ。

しかも見ているのはどこでもない、ただの空。

僕はその絵を千切って、砂漠の砂にした。

彼女の表情は、本当に、夜が似合う。



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