閉じる


<<最初から読む

13 / 23ページ

燃えないゴミ

 

「もういや」

わたしはごみ箱に捨てた。

そしてそれだけでは気が済まなかったので、

ごみ箱も捨てた。

 

「もういや」

わたしは向き合わなきゃいけないものを

分厚い布で隠し、部屋の隅に置いた。

そしてそれだけでは気が済まなかったので、

その布も他の布で隠した。

 

しかし、ごみはたまる一方で

布の面積は広がるばかり。

 

とんでもない量のものに囲まれて生活した。

それでもわたしは見ないふりをした。

 

あるとき、もういやになって部屋を出た。

けれど居場所がなくなって泣きそうになった。

 

でも泣いたって、慰めてくれるものは隠したし捨てた。

もうどうしていいかわからないまま、ぼーっと空を見ている。

 

嫌でも、隠したもの、捨てたものがある部屋が見える。

 

10、9、8、7、6、5、4、3、2、1

 

 

 

 

 

 

 

わたしは、ごみ箱に入った。


彼岸花とえくぼ

私はバイトが終わったら、始発でアパートへ向かう。

オレンジの世界を電車の窓から眺めながら

派手なメイクを涙で落としながら

何時ものように彼のアパートへ向かう。

 

生まれ変わったら何になろうとか

世界の終わりまでのカウントダウンしたりとか

そんな未来のことを考える。

 

駅からアパートへの道に彼岸花の咲くところがあるので

それを1本千切って持って帰る。

この花がなくなったら逃げるんだと心に誓って。

1本しか持って帰らないくせにね。

まだまだ遠い終わりを、彼が似合うといったこの花を殺しながら

夢見てる。

 

彼が潜むアパートに帰ると

わたしはすぐにシャワーで体をゴシゴシ。

もうね、痛いくらいに。

皮膚が擦れて赤くなってしまうくらいに。

 

落ち着く香りがするバスタオルを抱きかかえる。

ダサい色のワンピース着る。

外はもう白い朝。

 

彼は狸寝入りをしていて

それに飽きたようだ。

にっこり笑うとえくぼができる。

わたしは彼の細い体に抱き着くけど

あんまりにも細いから隙間ができて寂しさが丸見え。

 

それで、また裸にされるからさ、わたしは聞こえないように溜息をついて。

また体洗わなきゃね。

 

それでまた寝る。

言葉はいらない生活。

 

朝起きると彼は遊びに行くし

可愛い女の子を車に乗せてさ。

 

よく彼が歌ってる歌をゆっくり小さく口ずさむ。

瞼を閉じていないと、わたしが消えてしまいそうだから

閉じたまんま。閉じたまんま。

 

それで、また派手なメイクをして

似合わない柄の服着る。

札束を数えるけど、やっぱり彼のえくぼに吸い込まれて

手元には何も残らないよ。

 

私はバイトが終わったら、始発でアパートへ向かう。

 オレンジの世界を電車の窓から眺めながら

派手なメイクを涙で落としながら 何時ものように彼のアパートへ向かう。

 


天使の悪魔

大きな痣ができてどうやって隠そうか考えたとき、どうにも目立つ場所だったので、

もうどこもかしこも殴られればいいと思った。

もう、真っ黒になってしまえば、わたしは自分の影に溶けてなくなってしまえるような気がしたよ。

今になってみれば、あの辛い日々だって、狂ってしまえば楽だったのかもしれないのにね。

とにかく私は必死に自分の存在理由を探した。

だけど、私が居ない世界の方がお母さんだってお父さんだって傷つかないで済んだことに気づいた。

でも、わたしのことを愛してくれるお母さんがいて

わたしのことを毎日殴ってくれるお父さんがいて

わたしができたから、二人は結婚した。

わたしが天使で悪魔。

そして、わたしは二人を引きはがした。

ごめんね。

真っ黒になって溶けたいと今でも思ってる。

お母さんの胎内に戻してください。

ごめんね。


もしも話

 

 

 

ある日わたしは消える。

そしてわたしの存在を知る人もいなくなる。

 

 

 

 

 

わたしが消える前に、わたしのいない世界を

見せてもらえるそうだ。

少しの不安と期待を胸に、おそるおそる覗く。

 

 

 

 

すると先にわたしの存在が消えた母の世界が見えた。

 

 

わたしの母は、父とは違う男と結婚して裕福ではないが貧乏でもない

生活を一人息子と共にしている。

 

 

わたしの居たアパートとはまるで違う一軒家には、母とその家族の笑い声が小さく聞こえている。

寂しいけれど、幸せそうで本当に良かったなぁ。

 

 

 

髪の毛が痛んで薄くなり、沢山のアルバイトをして、

父の罵声を浴びて、ストレスを抱えて病気になってしまった母はどこにもいなかったんだ。

幸せになれたんだ。

 

 

少し息を詰まらせながらも今度は父の世界を見た。

 

 

 

 

父は、相変わらず美容院を経営しているがやはり儲かってはいないようだった。

それに恋人もいないようだが実家で暮らしていた。

祖父と祖母に大事にされながら毎日過ごしている。

 

 

 

すると、少し照れくさそうに「いつもありがとう」とプレゼントを両親に渡していた。

その顔は、男だけど、少し可愛らしかった。

 

 

毎日上手くいかない経営のストレスで子供に暴力をふるう父はいなかった。

毎日なにかに追われ、イライラする父もいない。こどもが嫌いな父もいない。

 

 

 

 

良かったなぁ。

 

 

 

本当に良かったなぁ。

 

 

 

 

よかったなぁ


3限目の科学の天使

あの子が飛んだ いつも笑ってたのに

あの子は羽がついてたんだ本当なんだよ

 

あの子が飛んだ いつも笑ってたのに

あの子は羽がついてた嘘じゃないさ

 

君は見てたかい?あの日の

3限の科学の時間に天使が来たんだ。

髪を揺らして。

 

 

あの子が飛んだ いつも笑ってたはず

あの子は羽がついてたんだ本当なんだよ

 

あの子がくれた 初めてだったんだって

あの子に羽をつけたんだ本当なんだ

君は見てたかい?あの日の

 

3階教室の窓に天使が来たんだ。

髪を揺らして。

 

 

さよなら さよなら さよなら

 

君は見てたかい?あの日の

3階教室の窓に天使が来たんだ。

髪を揺らして。

 

 

 

君は見て、高い あの子の

最後の場所に窓に天使が来たんだ。

かわいいだろ?



読者登録

たなかさんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について