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 夏休みも、もうすぐ終わる。

はじまるときは、あんなに長くいつまでもあると思っていたのに、なんのことはない

あっという間に終わってしまう。夏休みになったら、ふだんできないことをしようとはりきっていたのに、朝のラジオ体操も、めんどくさくて結局1回も参加しなかった。午前中には、宿題をして午後からは2時間ゲームをして、そのあとは、好きな本を読もうと日課には書いていたけれど、

そんなことは、続くわけもなく午前中からゲームをしていた。

 けんたくんは、小学3年生。小学生になって、今まで2回、夏休みをすごしてきたが、2回とも

そんな感じで、あっという間に過ぎ去って、最後の1週間で宿題を家族みんなでしていたのだった。今年こそは、充実した夏休みにするぞ、とけんたくんは心に誓っていたはずなのでした。

 けれども、やっぱり今、宿題に追われている。

でも、今年の夏は、海へ行ったんだ。あまり、みんなに知られていない海水浴場だったから、貸切みたいに、広々としていて、本当に気持ち良かった。お母さんが、桟敷にすわって、おにぎりを食べているのが見える。

 けんたくんと、妹は、海からその光景をながめていた。おにぎりは食べたいけど、海からでるのも嫌だ。冷たい海の中で、体をゆらゆら浮かばせていると、日常の嫌なことを忘れていく。

 たとえば、算数のテストが悪かったこととか、お母さんが妹の前で、ぼくを怒ることなんか。

 自然に抱かれるとは、こういうことかなぁ、と思う。海がぼくを、守ってくれていると思う。

母さんのおなかの中にいたときも、こんな感じだったのかも、なんて、ふと思った。

 ゆったりと海で遊んで、帰りはぐったり疲れたけれど、心地よい疲れだった。

 海での思い出は、ぼくを少し大人にさせてくれたみたいだ。お母さんにも、あまり腹が立たなくなった。

 けんたくんは、苦手な算数のドリルをしながら、そんなふうに思ったのだった。


この本の内容は以上です。


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