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でたらめの街



彼は頚を縊る瞬間
目を閉じたのだろうか
彼をさいなむ世界の総てを
見ずにすむようになったのだろうか

彼女は身を投げた時
口を開けたのだろうか
彼女の中に澱んで行った
心を全部吐き出せたのだろうか

君も家に帰り着けば
耳を塞ぐのだろうか
言葉も意志も空も水も嘘つきで
でたらめの街は時間だけが正しく過ぎて

ぼくは無機質な雑踏の中
誰にも届かないSOSの口笛を吹く
ぼくらが何も変えられないのなら
誰か代わりに生きてくれないかな

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Hallucination #68



目を閉じても目を開けても変わらない世界
暗くても明るくてもぼくはもう気にしない
ため息をつく胸の動きだけで広がっていく頭痛
薬や食事やラベル付きの時間が過ぎるのを待つ

決められたことを決められたようにやれない人びと
笑いたいように笑えないままに笑われていく
神様は見守ってくれる君だけの神様だけど
願いは妄想になってこの部屋の空気を満たす

から元気の看護婦たちは物のような人としてぼくらを扱い
少しずつぼくらは人のような物になっていく
閉じられた扉の隙間から吹くひんやりとした風だけが
この部屋に許された最後の世界へのあいさつ

はめ殺しの窓から空を飛ぶ空想をする
そんなことを話せば医者はまた困った顔をする

試し読みはここまでです。続きは購入後にお読みいただけます。

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販売価格350円(税込)

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