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あなたとの20年

毎朝、お水を上げる度にヒメ!今日も、神さまのお手伝いをしてくださいね。と拝み、お水を下げる時は、兄妹で仲良く遊びましたか?と聞く。

ヒメは、脱水症状が原因で死んだ。享年20歳のメス猫です。
ヒメは、猫族の種別では、サバトラの白と呼ばれる、グレィ×黒×白をしている。生まれた時からやんちゃな内弁慶で、猫族の集会に行くことも、テリトリーの確保で外を出歩くことも苦手で、三部屋しかない、この狭い家の中に寝床を3~4ヶ所も持っている。本宅・別宅と渡り歩き、我が物顔で歩くお姫さま。

それでも、脈々とつづく猫族の本能は目を見張るものがあり、天敵が来た!と逃げまわるネズミを勝ち誇ったように咥えてくることは数え知れず、蛇まで捕まえてきた時は、恐れおののき家来である人間が「許してくれ~」と悲鳴をあげた。稲穂の季節になると、悠々と出かけていき、近くの田んぼからイナゴやバッタを捕まえては、部屋に放り投げ、イナゴやバッタが飛び跳ねるのを、必殺の猫パンチで叩き落としていた。あなたは、腕が鈍るといけないと猫パンチの練習をしていたのでしょうか。

あなたが、家族の一員となって我が家に来て3回旅行しました。車の中では、鳴くこともせずにダンボールの中にチョコンと座りキョロキョロしていましたね。人に媚びず、家に就くと云う猫族の習性が、頭をもたげいざと云うときの帰り道を覚えるために、周りの景色を眺めていたのでしょうか

そうそう、あなたは抱かれるのは好きではなかったですが、お腹をマッサージされることは大好きで、大の字になって裸身をさらけ出していました。羞恥心のないあなたは、恍惚の表情で目を閉じマッサージに身を委ね、満足したあなたは、快楽の余韻を残し本宅であるコタツの中に潜り込み寝てしまいます。あなたは、どんな夢をみていたのでしょう

目覚めの早いあなたは、周りは寝静まり、まだ明けやらぬ時間に枕元に来ては蚊の鳴くような声でニャオと心地良い声をなびかせ、私を起こします。食事の用意が出来ていないことをやさしく諌め、あなたの好物メザシを用意することを忘れた私は、あなたの目を直視することは出来ませんでした。あなたにとって、その日の機嫌がわるくなったのは云うまでもありません。

あなたにストレスがあったなんて・・・、あなたが10歳のときに、季節の変わり目に抜け毛がひどくなり、体の半分が抜けて丸裸になるのではと、とても心配しました。どこか病気かも知れないと、急いで駆けつけた病院での診察は慢性腎臓病で、それも余命1年と宣告され、家来である私はエッ~とビックリしましたが、診察を受けたあなたは、重い病を抱えながらカツオのたたきに舌鼓を打って満足そうでした。

あれから10年が経ち、慢性腎臓病と診断し、余命1年とまで云われたあなたは元気です。それに、何よりも、丸裸どうぜんの抜け毛が見事復活してフサフサの毛をなびかせています。あなたは、どんな塗り薬を手に入れて抜け毛を予防して、復活したのでしょう。抜け毛と薄毛に悩む家来に秘伝を教えることもなく、あなたは天国に召されました。

5月に20歳の誕生日を迎えたあなたに、大好きなソフトクリームでお祝いをして、あなたは鼻に付けられたソフトクリームを長い舌を駆使して舐めていました。喜んでもらえたのでしょうか。

1日に何度も水を飲むあなたが、日に日に痩せていくのが心配でした。あなたの要求に応えるようにマッサージに心を込めて、あなたの体を探っていました。少し痩せたな・・・と、思う回数が多くなり、名医と評判の病院の門を叩きました。診察ノートに満20歳と記入すると、周りにいた人が、ワァ~すごい!と手を叩いていました。長寿の素晴らしさを実感しましたね。

あなたを、いろいろな最新機器を使って診断した結果が「脱水症状」でした。あんなに飲んでいるのにと思った私は素人です。飲んでいても喉を潤すだけで、必要な水分として体に回っていなかったのですね。それから、毎日通院です。点滴を受けて回復を祈りました。それでも、あなたは骨と皮になり、排便がスムーズに行かなくなり、我慢できなくて、部屋中がトイレになりました。好きな場所でトイレをしても良いんですよ、部屋中にシートが敷かれて万全の態勢です。

あなたは、起きることも辛くなり寝たきりになり、寝床は私の横にしました。暑い夏でしたがクーラーで体を冷やさないように、あなた用の衝立を作り、体が冷えないようにタオルを掛けて見守りました。

あなたの寿命を悟りました、あなたと私は20年もいっしょに暮らしてきたのです。あなたは横になって身動きも出来ずに、時おり目を開けて合図をしているようです。あなたの合図に私は頷くだけです。あなたは夢のなかで、行方知れずとなった兄妹の事を思いだし、夢のなかで会っていたのでしょうか
お盆の季節になり、危篤となったあなたにオモチャの注射器を使って水を流し込み、たまに喉を鳴らす音がすると、今日も生きてて良かったと心から思いました。
あなたは、私たちの大事な家族です。あなたのいない家族構図は考えられません。すこしでも長く、同じ空気を吸って欲しいと願いました。
お盆休みは、誰一人外出することもなくあなたのそばで過ごしました。あなたとの別れが近づいていたのです。あなたが、誰にも看取られずに死んでいくのは耐えられない光景です。

8月17日。最期の日がやって来ました。痩せて、骨が剥きだしたなったあなたは、少しだけ目を開けました。その時に注射器でお水をやりました。ゴクンと喉がなったような気がしました。あなたの頭を私は掌で支え、あなたの手を握ったのです。あなたは、足から体に向かって少し痙攣したように動きました。そして、静かに目を閉じて天国に旅立ちました。

ヒメ!あなたとの20年間が走馬灯のように蘇り、あなたと暮らした20年間は楽しかったよ。暴れて大変でしたがお風呂にもいっしょに入りましたね。雪で小さなカマクラを作り、あなたを中に入れたり、フワフワした雪に飛び込ませたり、寒いのが大嫌いなあなたは、毛を逆立てて怒り狂っていました。ごめんね。

親鸞が説法を繰り返した国の重要文化財に指定されている浄興寺でお葬式をしました。読経が流れてあなたを偲びました。あなたの一生をいっしょに過ごすことができて嬉しかったです。

いまも、あなたは私のそばにいます。骨壷を戴いて神棚の下に置いて、毎朝あなたの好きだった缶詰とお水をあげていますよ。ちゃんと飲んでいますか?天国では神さまのお使いであっち行ったり、こっちに来たりで忙しいでしょう。たまに兄妹で集会でも開いて昔話に花を咲かせているのでしょうか。
ヒメ!
いつか、きっと・・・オ・ネ・ガ・イ。福の神を連れて来てね。


奥付



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著者 : bunise
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