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高野豆腐

 

こうや豆腐という不思議な食べ物がある。

 

そもそも豆腐自体、不思議な食べ物だ。

豆が腐ると書くけど、別に腐ってない。

嫌いな人がほとんどいない(僕は会ったことがない)。

冷やしても熱くしてもおいしい。

淡白な味の癖に、つくる人、地方によって微妙な味の違いが楽しめる。

 

そして、それを一度凍らせ、水分を飛ばしてつくるという複雑な製造プロセスを加えたのが、こうや豆腐だが、これも値段も安く、しかもおいしい。

「こうや豆腐普及委員会」という不思議なサイトによると、こうや豆腐と呼ぶのは関西風で、正式には凍り豆腐というらしいが、僕は長い間、「凍り豆腐」と書いて「こうや豆腐」と読ませるのかと思っていた。こうや=高野豆腐では、宗教的な問題があるらしいが、まさか「比叡豆腐」と呼ばせる人がいるわけではなかろうし、「こうや豆腐」の方が情緒があっていい気がする。まあ、世の中には、変なことにやたらこだわる人がたくさんいるから、真剣な討議な末なのだろうけど・・・。

 

実は子供の頃からこうや豆腐が大好きだったのだが、子供の頃は、口のなかに入れた

あと、舌でぎゅーと押し付けて汁を絞り楽しんだ後、もう一度口から出して汁につけ

ては何度も楽しみ、よく怒られていた記憶がある。この前、教えもしないのに、子供

が同じことをやっていて、つい「やめなさい!そんなきたないことは!」と叱ったものの、これはこうや豆腐の誘惑がそうさせるか、単なる情けない自分のDNAがなせるわざなのか、一度調べてみたいと思っている。

 

こうや豆腐の起源も数説あるらしく、高野山で鎌倉時代に高野山でたまたま凍ってしまったという説や、長野、北陸を起源にした説、はたまた弘法大師(空海)が留学先の中国から持ち帰ったという説など、どれも決定的でない。ただ、僕のイメージは、結構はっきりしていて、「こうや豆腐」が食卓に並ぶ度に、脳裏に浮かぶのは・・・

 

時は平安中期。

遣唐使として唐へ渡った空海は、七年分の留学費で密教の経典を買い集め、早々に切り上げて帰国する。

天才空海にとって、密教の原理がわかった以上、これ以上唐に留まるより帰国して経典を紐解いた方が、道が開けると悟ったのだ。

そして、唐で見つけた不思議な食べ物・・・豆腐。

その製法も教わったので、日本に帰って作るのが楽しみだ。

これなら寺の食事の中心に位置づけられる。

 

やがて空海は予定通り、朝廷からも認められ(密教もさることながらその書の腕前と、そして豆腐を紹介したことへの評価も高かった!)、高野山に自分が持ち帰った密教の総本山を作ることとなる。そして、都から遠く離れた金剛峰寺の境内には、大豆畑が作られ、そこでは空海の指導の下、高野山の清らかで冷たい水を使ったおいしい豆腐が作られていたのであった。

 

ところで高野山は今でも奈良と和歌山の県境で標高高く、冬の寒さは厳しい。

ある寒い朝、小僧が中にしまい忘れた豆腐が凍っているのを見つけた空海は、食べ物を粗末にしたと烈火のごとく

怒り、小僧をしかりつけたものの、なんともその豆腐が惜しい。

そこで、なんとか食べられないものかと日なたでその凍った豆腐を溶かし、ふやけた豆腐を絞って

口に入れたところ、意外においしい。

「おおっ、これは!」と

その感激を誰かに伝えたいと思った矢先に現れたのは、先ほど死ぬほど叱った小僧。

どうしようかと思った空海だったが、このおいしい凍り豆腐を発見したのも、この小僧のおかげと思い返し、やさしく声をかけた。

「食うかい?」

・・・

やはり冬の高野山。寒うございましたな。

かくなる上は、豆腐の角に頭をぶつけて・・・。

  

 


マイホテルライフ

 子供の頃、うちにあった絵本のなかに、ホテルが断面になっていて、色々な部屋で、色々な人が(絵本では動物を擬人化していたが)色々な過ごし方をしているよ、
てな、ページがあって、今でも、ホテルの部屋に入ったときに、ふと、このホテルのそれぞれの部屋に色々な人生のひとコマが・・・などと思うことがある。
まあ、風呂入って、寝て、起きて、着替えて・・・ぐらいなものだろうけど、それでも、その人なりの習慣や順番があって、きっと、比べるとへえー、ということやら、今度から、そうしてみよう、ということもありそうな気がする(「絶対しねえよ、そんなこと」というのもあるだろうけど)

 実際、最近では、あまり相部屋ということをしないから、他の人がどういう生態をしているかはよくわからない。

 で、今回は突然ですが(且つ面白くないでしょうが)僕のホテルライフ(出張編)のご紹介です。

 

まず、上のような、隣は何する人ぞ、などど考えながら、バッグをドサっと置き、靴を脱ぐ。

そして、国内外を問わず、30分以上の空き時間があれば、続いてさっさと全てを脱いで、シャワーを浴びてしまう。特に遠くへの海外出張の場合は、そうやって飛行機の疲れと時差を取るのだ。

 シャワーからあがったら、ようやくバッグの荷物を片付け始める。以前は、着替えも朝までバッグのなかにしまいっぱなし、ということもあったが、ある先輩の部屋にお邪魔したとき、例え一泊でもきちんとアンパッキングしている様子を見て、かっこいい、と思い、今では、洗面道具は洗面所の鏡の前、着替えはクローゼットのなか、夜読む本は枕元、薬の類は、水のボトルの横、仕事の書類は、テーブルの上、寝巻きのTシャツは、枕の下、と定位置に置くようにしている。やれば5分もかからないものだ。

 さて、一度出かけて、夕食から帰ってくるのは大抵、遅くなるので、以前は、そのまま寝てしまって、朝にシャワーということも多かったが、数年前から、寝る前に、湯船にシャワージェル(無ければ石鹸)をボトル全部流し込んでからお湯をため、いわゆる泡風呂にして風呂にゆっくり入るようになった。体にすごくいいよ、といわれて始めたのだが、たまのリッチな時間を、今では出張の楽しみにしている。

風呂上りには、日記を書いて、お祈りをしてベッドに入る。
・・・嘘です。ごめんなさい。
ただ、机には一回向って、次の日のスケジュール確認と、簡単な備忘録をつける。
(最近、とくに記憶力に自信がなくなり、その代わり、備忘ノートをつける習慣が出てきた。あとで読み返して、

①楽しいときと、②恐ろしいときと、③字が汚くて読めないときがある)

 

おっと、忘れていた。ホテルというのは、大抵大きい鏡がついているものだが、風呂上りに、裸で自分の体型のチェックをすることも多い。

残念ながら、少し、太ったな、とか、筋肉落ちたな、と思うことが多く、特に焦ったときは、急に腕立て伏せを始めたり、腹筋したりする。

不思議なもので、ちょっとした腕立て伏せなどでも、筋肉は張ったりするもので、その後、もう一度、鏡の前に立ち、ボディビルもどきのポーズをして、少し安心してようやく心穏やかに鏡の前を離れる。

アホみたいだが、我ながらかわいいもんである。

 

それから、翌朝の寝坊防止対策は、念を入れる。フロントにモーニングコールを頼み、備えつきの目覚ましのアラームテストを行ってからセットし、且つ、携帯のアラームもセットする。それでも、寝坊する夢を見たりするのは、なぜだろう。実際には、お酒で失敗したとき以外は、寝坊したことはありません

そして、やっとお楽しみの読書タイムがやってくる。お酒もお風呂で少しとんでいるので、ちょうどいい気持ちで本を開くとき、「幸せだなー」と感じ、一人でにこにこしている。

これなどは、人に見られたらかなり気持ち悪いかもしれない。

まあ、大体、5分も持たずに寝てしまっていると思う。

(時差があると、ここから眠れぬ夜が始まることも多いのだが・・・)


 さて、寝るときだが、中級以上のホテルに泊まると、大抵、枕が二つついている。

皆さんはどうしているかわからないが、僕は、この一つを抱き枕にして寝ている。

気持ちいいですよね?あれ?皆、してないかな?

(ああ、そこの君。今は、あくまでも出張編だから。寂しいねえ、などといわないように)

朝は、まあ、そんなに変わらないと思う。シャワーは浴びるが、ぎりぎりまで寝ているので、

ばたばたで、パッキングまでしてから朝食に出かける。基本パターンは、やはり、

朝準備→朝食→部屋に戻って朝のおつとめ→チェックアウトだが、たまに、この基本パターンを守らない人がいて、朝食後に、

「じゃあ、5分後にチェックアウトね」

などという上司がいると、時差の上に更に生理を崩され、もうめちゃくちゃである。

これで読んで思い当たる人は、今度から、朝食後は必ずお勤めの時間を取って、15分後のチェックアウトにしてください!

 

以上でございますが、

「なんじゃ、そりゃ。お前はホテルライフがまるでわかっとらん!」という方は、

是非、ご指南ください。

真摯に受け止め、今後のより一層充実したホテルライフの参考にさせていただきます。

 

ちなみに、アメニティグッズは何を持って帰るか、とかいうせこい話や、

寝る前に床に濡れたバスタオルなど敷くとのどを痛めない、など添乗員の常套句みたいなのは割愛いたしました。

  


この本の内容は以上です。


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