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 翌日。

 エドウィンは、昼前に、サリーの働いている旅行代理店に行ってみた。
 店は臨時休業の張り紙をして、閉まっていた。
 タイミングよく、裏口から出てきた関係者らしき女性を捕まえて話を聞いてみると、営業の一人と事務員が二人も急に辞職し、店を営業することが出来ないということだった。
 どうやら、カスパーが殺人犯人だということがわかり、その対応にも追われている様子だった。

(やっぱり、辞めてたか)

 がっくりと肩を落としながら、エドウィンはサリーのアパートにも行ってみた。
 すると、驚いたことに、サリーはまだアパートを引き払っていなかった。
 前回の発砲事件の時は、もぬけの空だったというのにだ。

 しばし迷ったが、誘惑には抗しきれず、エドウィンはサリーの部屋の鍵をあけて、中に入ってしまった。
 サリーの部屋に入るのは、これが初めてだ。
 だが、サリーの許可もなく、部屋の中を見てまわる気にはなれず、玄関扉に背をあてたまま、遠慮がちに部屋の中を見回す。

 きちんと片づいているが、生活感のある部屋。
 日当たりのいい出窓に置いてある鉢植えの花と、家族写真が入っているらしいフォトスタンド以外には、余計なものは一切ない。
 なんだかサリーらしいなと、エドウィンは小さく微笑んでいた。

「引き払っていないということは、ここに帰ってくるってことだよな。一人で考えたいって言っていたし。結論がでれば、帰ってくるってことだよな」

 完全に姿を消してしまった前回とは違う。
 サリーの言っていた時間がどれほどのものかはわからないが、その時間を待っていたら、サリーはまた姿を見せてくれる。

「そう思ってもいいよな」

 それぐらいは、サリーの中で自分の存在が大きいと思いたい。
 でないと、とってもじゃないが、悲しすぎて、情けなくて、立ち直れないかもしれない。

 エドウィンは、頭をかかえてしゃがみ込み、しばし深く落ち込んでいた。
 だが、すっくと立ち上がると、ぐぐっと拳を固め、気合い入れた顔でサリーを部屋を出ていく。

 勿論、このまま指をくわえてサリーが帰ってくるのを待つつもりなど、エドウィンにはない。
 まずは、この部屋にサリーが帰ってきたらすぐにわかるように、センサー設置してやるっと、エドウィンは走り出した。

この本の内容は以上です。


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