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2010.02.01 王祇祭(下座当屋)

黒川能・王祇祭(下座当屋 黒川下地区交流伝承の舘)2月1日~2日



2年ぶりに王祇祭へ行ってきました。
今年は、下座にお邪魔することに。


詳細レポートは、クリコさんやヨウダさんにお任せして、さくっと流れだけを追ってみます。
演目は、大地踏/
式三番/高砂/三本柱/範頼/瓜盗人/杜若/茶壺/鐘巻/こんかい/嵐山(青字は狂言)。

「大地踏」



王祇守さんが、王祇様を担いで舞台中央で広げ、その下で、男の子(ただし、下座の場合は女装)が謡ったり舞ったり足拍子を踏みます。

王祇様を閉じて戻した後、さらに男の子は舞台を駆け回り、要所要所でトントンと足を踏みます。

今年下座当屋の大地踏は、小林凜太朗君。

女装なので髪を垂らすのがくすぐったいのか痒いのか、いやいやをして取ってもらい、大きな烏帽子に小さな頭がすっぽり隠れてしまいそうになりながら、それでも機嫌よさそうにもっぱらマイペースで役をこなしていました。

ついこの間4歳になったばかりとか。
おとなになったとき、今日のこと、覚えているでしょうか…。

「式三番」

   
〈翁〉は、座長の上の由部太夫。風格ある翁です。
〈千歳〉は、なにか”堪える男”を感じさせる、何といったかなぁ、好きな俳優さんにとても雰囲気が似ているのですが…。
〈三番叟〉は、ときおりふっと萩原聖人に似ていたりします(?)

とにかく太夫さんとこの若いおふたりによる式三番はどっしりとして、相当に充実したものでした。

 

 三番叟の面が、可愛いような不気味なような、実に不思議な表情をしていてじっと見入ってしまいます。
プリミティブな分だけ闇や大地のパワーといったものを持っているような。

「高砂」 


幼い姥(どういう修辞だ)と、幼い神職さんたちです。

4人いる神職さんたちは、向こうにいくほど細(こま)くなります(^_^)
じっと同じ姿勢でいるのは疲れるので、ときどき足と扇を持つ手を入れ替えては、後ろから「扇は右手」と直されてました(^_^;) 
長いから大変です。じっと座っているだけでも偉いものです。
手前のお兄ちゃんは、別次元の固有な哲学的世界で時間の経過を待っているかのようでした。


前シテのお爺さん。


後シテの住吉明神。太夫さんのご子息だそうです。

「三本柱」
3本の柱をひとり2本ずつ担いで来いと命じられた太郎、次郎、三郎冠者が、頭をひねった末、三角形に柱を置いてひとりがふたつの端を担いで行くことにするというお話。

その知恵者ぶりが、地謡座のお年寄りたちに異様にウケてました。



「範頼」
昭和5年に演じられてから80年ぶりの出しもの。

源範頼は、兄である頼朝に疑われ、忠誠を誓う起請文を出したにもかかわらず、討伐されてしまうというお話。

義経とそっくりな境遇ですね。切った張ったの末、自害する場面が印象的。

このおシテも俳優さんに似ている。伊藤淳史?



「瓜盗人」



瓜泥棒を案山子に化けた畑主が懲らしめる話。

「若い者のするのはこの程度のものだ」とか「百姓というのは賢いものだ」とかいう台詞が、当人がお若くて、演者のほとんどがお百姓さんなので可笑しかった。

「杜若」

 

前シテが幕入りすると、入れ替わりに後シテが出てくるといったふうで、念のう早かった。

「茶壺」


道に酔っぱらって寝ている男の担いだ茶壺をすっぱが奪おうとして、結局、裁きを託された目代に持ち去られてしまう。

「鐘巻」
「道成寺」の古い型なのだそうだ。

鐘の模様がリアルなところ、白拍子の舞を見たいとワキツレまでも口添えするところなどが見慣れた「道成寺」とはやや違う。

「鐘巻」のタイトルどおり、いつまでも鐘の周りをぐるぐるしている。おシテは〈翁〉と同じ上野太夫で、このぐるぐるしているあたりの乱拍子の気迫が素晴らしかった。

  
足使いのよく見える場所にいたのだけれど、「鐘巻」に限らず、独特の不思議な足使いがしばしば見受けられた。
黒川特有のものなのでしょうか。


鐘が上がったときの後シテの面差しは本当に怖ろしいのでした。
当屋の舞台では橋掛かりがないのだけれども、後シテは幕の向こうまでを橋掛かりのように使い、シテ柱に巻き付いて僧侶に抵抗していました。

みっしりと見応えのある一番でした。

「こんかい」



「釣狐」のことのようです。

狐は僧侶に化けて、猟師に狐釣りをやめるように諭すけれども、猟師は約束を違えて罠をしかけ、狐はそれにかかってしまう。
ずいぶんあっさりした(可哀相な)お話でした。

「嵐山」


半能。美しいツレふたりの舞が気持ちよく、最後をきっちり締めてくれました。



 下座は、朝の4時20分頃には全曲終了、今年は、しばがきさん、クリコさん、ヨウダさんと4人で王祇会館へ戻りました。
来るときにはなかった雪が路面にうっすら積もって、つるつるして怖かったけれども、なんとか転ばずに帰りましたとさ。

2010.02.02 王祇祭(春日神社能舞台)

黒川能・王祇祭(山形・春日神社)2月2日

一夜明けて……。

今日は、春日神社にて両座立合能。
脇能から初めて昨日とは逆順に式三番までを演じます。難波/高砂/大地踏/式三番。

「難波」(上座)
旅の朝臣が摂津難波で梅の木陰を浄めている老人と若者に会い、難波の梅の由緒について教えられる。夜になると、梅の神霊である木華咲耶姫と王仁が現れ天下泰平を祝福して舞う。



ワキツレの小さな子たちが上向き加減に一生懸命謡う姿がツバメの雛のようで可愛くてなりません。

 

王仁作とされる難波津の歌
――難波津に 咲くや この花 冬ごもり 今は春べと 咲くやこの花――

〈花〉といえば、今は〈桜〉ですが、昔は〈梅〉だったのですね。それは知っていましたが、すると木華咲耶姫まで梅の精になってしまうのですね。そうかぁ。

とにかく長くて朦朧としていたので、木華咲耶姫を見た記憶がない…(_ _;)

「高砂」(下座)


これは前夜に見たのと同じ演目ですが、役者は総入れ替えで全員別。木守の姥も大人でした。

下座は、全員舞台の右側の橋掛かりから出てきて、上座とは左右対称の配置で座ります(笛方がシテ柱の近くに見えます)。

「難波」が2時間、「高砂」も2時間、この時点で午後2時。
お祭自体が4時に終わるとパンフレットには書いてありますが、もはやあり得ません(>_<)

「大地踏」(両座)

 

左が上座(男装)、右が下座(女装)。

大地踏の稚児も、前夜とは別人です。
上座が齋藤真之介くん(7歳)、下座が成田誠矢くん(5歳)。
今年の大地踏組は総じて小声の子が多かったですね。

「式三番」(両座)

 

所仏則(ところぶっそく)の翁。上座の翁太夫さんです。

「所仏則」の式三番は、普通の式三番とは趣を異にし、釈迦の仏法を広めることを主としているのだと解説書にはあります。


三番叟は、昨夜下座当屋と同じ清和正俊さん。二度も見られて嬉しいです。

しかし、やはり三番叟のあたりから、背後では若衆たちが尋常ごとに向け騒然としてきて……

王祇祭の神事

●2/1当屋にて

王祇様

 
王祇様に御挨拶する当屋(清和治四郎)さんと王祇守さん

暁の使い出発


高砂の途中で、上座へのお使いが出発。

●2/2 春日神社にて

「朝尋常」

  
お宮に上ってくる王祇守&当屋さん



ダッシュした上座が雪に足を取られて転んだ隙に下座の王祇様が窓に放り込まれ、判定は「下!」

「棚上り尋常」


判定は「上!」

「王祇下し/餅切り尋常」
布剥ぎのほうに注目していたので、こちらでは何が起こったのか見ていませんでした。ちょっと揉めてた?

「布剥ぎ」
見逃さないように注視していたはずなのに、やっぱり何が起こったのかわからないうちに、裸の王祇様とぐるぐる巻きになった来年の王祇守さんの姿がそこにありました。
(このあたりの写真には、皆、たまゆらが漂っておりました。↓これも)



下の写真、当初真っ黒な画面でしたが、少し処理するとこのようなものが写っていました。
もしかすると、これが、剥がされた布が目の前を横切っていく瞬間だったのかも。
そう思うと、貴重な写真なのかも(^_^;)



−fin−

奥付



黒川能〈王祇祭〉2010


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著者 : 月扇堂
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