目次
▲序章 お墓と霊園の法律
◆1 墓についての法律
◆2 墓とはなにか
◆3 墓地等の設置、管理
◆4 墓の種類と権利
▲第一章 お墓をつくるときの問題
◆1 自分の家の庭にお墓をつくることができるか
◆2 墓地についての権利関係はどうなっているのか
◆3 墓地(霊園)をつくるのになにか許可が必要なのか
◆4 個人で先祖の納骨堂を建てることになったが
◆5 兄弟が協力してつくる墓の権利関係は
◆6 ロッカー式(マンション式)の納骨堂の実態は
◆7 石材店が悪徳商法をしているが
◆8 ピラミッドや天皇陵のような巨大墓をつくれるか
◆9 お墓をつくるとどんな税金がかかるか
◆10 お墓には敷地・墓石など規格があるのか
◆11 墓地のペーパー商法にひっかかってしまったが
▲第二章 お墓に埋葬するときの問題
◆1 死体を埋葬する手続きはどうなっているか
◆2 土葬が死者の遺言だが許されるか
◆3 遺言で骨を粉にして海にまいてくれとあるが
◆4 自分の家の墓に内縁の妻を入れたいが
◆5 姑と一緒の墓に入りたくないという妻の遺言があった
◆6 愛人の子供の死で父親の墓に入ることを要求できるか
◆7 お骨を埋葬せず手許(押入など)に置いていいか
◆8 死産の場合の埋葬はどのようにするのか
◆9 早産で生後すぐ死亡した場合も埋葬は必要か
◆10 葬儀社には埋葬のことでどこまで頼めるか
◆11 失踪宣告の人の葬式・埋葬はどうするのか
◆12 戒名の値段の相場はどのようになっているか
◆13 永代供養料の相場はどうなっているか
◆14 行倒れで引取人がない死体の埋葬はどうするのか
◆15 宗派が違うということで埋葬を拒否されたが……
◆16 檀家でなくなると寺の墓地には入れないのか
◆17 ペットを先祖代々の墓に入れることができるか
◆18 友人の墓に父親の遺骨を“間借り”埋葬はできるか
▲第三章 お墓を管理するときの問題
◆1 墓を勝手に動かしてもよいのか
◆2 道路ができるから墓地を移転してくれといわれた
◆3 墓地の境界のことで他家と争いになっているが
◆4 墓を何者かに勝手に発掘されたが
◆5 墓石を倒され、石が欠けたのを作り直したいが
◆6 永代供養なのに墓が処分されてしまった
◆7 法外な供養料を要求されているが…
◆8 住職が勝手に寺を抵当(証券)に入れたが
◆9 墓地管理の規約はどうなっているか
◆10 墓地管理人の責任はどこまであるか
◆11 墓地にも“契約更改(新)”があるのか
◆12 墓石は自由に新しいのに取り替えられるか
◆13 無縁のお墓(仏)はどのように供養されるか
◆14 隣の墓所から雨水が流れ込んで困っているが
◆15 分骨する場合はどのような手続きが必要か
◆16 墓を移転(改葬)する場合に、親族の合意は必要か
◆改葬をめぐる訴訟
▲第四章 お墓の承継をめぐる問題
◆1 お墓は誰が承継するのか
◆2 お墓を承継するのに何か手続きが必要か
◆3 一人っ子同士の結婚で墓の承継はどうなるか
◆4 子供がいない場合先祖代々の墓はどうなるか
◆5 お墓の承継者は婚姻で姓が変わるとなれないのか
◆6 遺言でお墓の承継者が指定されているが
◆7 誰もお墓の承継者になり手がないが
◆8 身内がいず、死者の弟子が墓を承継したいといっているが
◆9 墓所を分けて承継することはできないか
◆10 墓を承継すると税金をかけられるのか
▲第五章 墓地・霊園経営の問題
◆1 檀家以外の人が寺の墓地に埋葬してくれといってきたが
◆2 お寺の墓地の承継者が行方不明だが……
◆3 墓地を整理してその上にマンションを建てたい場合
◆4 お寺の新築・増改築のため、墓地を若干整理したいが
◆5 お寺の前の道を広げるということで役場から墓地買収の告知があったが
◆6 お寺の借金のかたに墓地を抵当に入れたいがその手続きの仕方は
◆7 墓の整理をめぐって住職と檀家(檀徒)が対立しているが
◆8 お寺の住職と本山との身分上の関係はどうなっているか
◆9 お寺の住職はお布施を勝手に私用に使えるか
◆10 檀家についての規則や規約とはどのようなものか
▲資料・判例
◆資料1・お寺が埋葬を拒否できるかの判例
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◆1 墓についての法律

 墓については基本的な法律があります。「墓地、埋葬等に関する法律」という長い名前のついた法律で、戦後、昭和二三年にできたものです(以下、「墓地法」と省略)。
 それ以前は、明治一七年に出された太政官布達「墓地及び埋葬取締規則」などによっていました。この本はもちろん現行の、右「墓地法」によって説明をします。しかし、実際の墓や墓地は古いものが多く、今述べた太政官布達よりもっと前のものもあるわけで、「墓地法」に合っていないものもあります。したがって、墓をめぐる法的関係は、かなり取りとめのない部分があり、解釈を困難にしています。しかも紛争があっても裁判にまでなることは少なく、判例(裁判例)もわずかで、学説も詳しいものは少ないのが現状です。解決を今後に待つほかない問題も多いことを理解しておいて下さい。
 この「墓地法」と併せて大事なのは、刑法の規定(第一八八条~一九二条)です。一括して「礼拝所及ヒ墳墓ニ関スル罪」と名付けられています。その中でも重要なのは、第一九〇条の「死体遺棄罪等」です。「墓地法」を守らないで死体を処分するとこの「死体遺棄罪」などに引っかかる、というわけでイヤでも墓地法を守らなければならなくなる、という仕掛けになっているのです。なお、船員法に「水葬」の規定がありますが、これは特殊なことですから説明は省きます。
 さらに、「宗教法人法」も関係を持ってきます。これは、墓や墓地そのものについての規定ではありませんが、墓地はお寺に所属しているものが多いので、この法律が必要になるのです。
 そのほか、民法には相続に際しての「墳墓等の承継の規定」がありますし、その他いろんな法律が関係してきますが、それらは問答の中で触れることにします。
 以上の必要な法律などは、巻末に資料として載せましたからこれを参照して下さい。

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◆2 墓とはなにか

 墓のことを法律では墳墓といっています(刑法には「墓所」という用語も出てきますが大体同じ意味です)。墓地法では、墳墓について次のように定義しています。
 「この法律で『墳墓』とは、死体を埋葬し、又は焼骨を埋蔵する施設をいう」。
 「墓地法」以外の法律では、意味が少し異なる場合もありますが、ほぼ同じに考えてよいでしょう。
 右によれば、「死体」「焼骨」以外のもの(たとえば遺髪や名札などを埋めたもの)や、石塔だけのものなどは、たとえ「○○の墓」と書いてあっても墳墓、つまり墓ではないことになります。したがって、これについては墓地法の適用はなく、その制限を受けることはありません(ただし民法や刑法の適用は別問題です)。
 死体については「埋葬」といっています。つまり土葬です。焼骨(火葬の場合)については「埋蔵」という用語を用い区別していることに注意して下さい。
 さて、その「施設」とはどのようなものでしょう。納骨堂は、墳墓とは別になっています。これは同じ「焼骨」つまり火葬によるものではあっても、これを「収蔵」する施設です(これについては後で述べます)。墳墓とは、一般にどのような「施設」なのでしょうか。
 今日一般的なのは、いわゆる霊園や墓地に墓塔が建てられ、その基部に焼骨を収納するスペース(カロート)がとってあるという形式のものでしょう。他にいろいろな型があります。
 焼骨をじかに土中に埋め、石塔など墓標を建てたもの(カロートがないもの)、逆に、墓標がなく土盛りだけのものもあります(古くは塚といったようですが、普通の墓を塚ということもあります)。
 土が盛り上がっていなくてもかまいません。土葬の場合など、埋葬の施設といっても、単なる土穴です。本来は深く、二メートル以上も掘り、これに土をかぶせて埋めるだけです。むろん、墓標をのせることが多いでしょうが、それがなくても墓です。土葬の場合、本格的な石塔などを建てるのは土が落ち着いた、最低でも一年以上後が普通で、はじめは卒塔婆など木のものを建てるのが慣習です。
 このように、施設らしくなくてもやはり施設であり、墳墓であるわけです。ただし、埋葬という言葉に現れているように「葬る」ための施設が墳墓であって、殺人の結果死体を隠すため埋めたとか、棄てるため埋めた、などは(たとえ拝みながらやったとしても)埋葬ではなく、死体遺棄であり、ただの土穴です。墳墓ではなく、犯罪現場にすぎません(殺人でなくても遺棄罪になります)。
 ここで、「埋葬」「火葬」の定義に触れておきましょう。墓地法にはこうあります。
 「この法律で『埋葬』とは、死体(妊娠四箇月以上の死胎を含む)を土中に葬ることをいう」
 つまり、土葬の意味で、死体をそのまま土に埋めることです。これを埋葬というのです。
 次は、「火葬」です。
 「この法律で『火葬』とは、死体を葬るために、これを焼くことをいう」。
 「葬るために」とあるのに、ここでも注意してください。でたらめに死体を焼くことは死体損壊罪になります。さらに、用語の定義を続けておきます。
 「この法律で『墓地』とは、墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事の許可を受けた区域をいう。」
 これが墓地についての定義です。知事の許可を受けた地域、とある点が要注意です。古い墓など、この許可のない土地にあるものもあるかもしれません。お墓、つまり墳墓そのものについては許可はいりません。ただ、法律にはこうあるのです。
 「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行なってはならない。」
 死体や骨は、墓地以外に入れてはならないということです。だから、許可のない土地に墓をつくっても死体も骨も入れられないのです。墓をつくることは勝手ですが、使ってはならないのです。使う以上は地面について墓地としての許可がいるわけで、結果的に許可抜きの墓はつくれないことになります。
 法律もヤヤコシイ書き方がしてあるものですね。あっさりと、「墳墓は墓地以外の区域に設置してはならない」とでも書けばよさそうなものです。しかし、墓地として許可のある場所以外に墳墓があって、しかも法律に触れない場合があり、それが今述べた古い墓です。江戸時代からの墓などがそうです。
 墓地法は、昭和二三年にできたことは前に書きました。その前の太政官布達でも明治一七年です。それ以前からの墓で、しかも現在も遺族が残って、きちんと管理、法要をしている墓、しかもその地下には(土葬であれ火葬であれ)遺体が埋められている、というものは今でもなくはありません。埋めてはならん、と墓地法で決めても、法律成立以前に埋めた行為まで違法にはなりません。そして、古い墓でも墳墓は墳墓です。ただ、今後は埋めてはならんよ、ということになります。
 しかし、明治以後でも、あるいは昭和二三年の墓地法成立以後でも、違反はあり得ます。墓地としての許可のない場所にある、江戸時代以来の先祖の墓へ、昭和になってお骨を埋めた――などということは、ありそうなことですし、先祖伝来でなくても、昭和になってから山の中へ、または屋敷内に墓を作った、ということもあり得ます。
 この場合はどうでしょう。「埋めた」という行為は、違反ですから罰せられます。もし、死体等遺棄罪になる場合は、三年以下の懲役です(しかし、三年経てば時効で公訴されません)。しかし、死体遺棄などでなく、当たり前に葬ったのだが、墓地の許可のない場所に埋葬(埋蔵)しただけの場合はどうでしょう。これは、墓地法の第四条違反として罰金となります。さらに、墓地法第一〇条に「墓地、納骨堂又は火葬場を経営しようとする者は……都道府県知事の許可を受けなければならない」とあります。そして、この違反は六か月以下の懲役か罰金と、かなり罰則が重いのです。
 ここでいう経営とは、自家用の墓地で利益目的でないものもこれに当たります。しかし、自分が埋葬、埋蔵したのでなく、古い墓を壊さないで大事にしていることまで墓地経営とはいえませんから、これは大丈夫です。古い墓であるかどうかについて微妙な問題がありますが、最近のものでない限り罰則の適用を苦にすることはないでしょう。
 墓地についての説明が長くなりましたが、次は納骨堂です。
 「この法律で『納骨堂』とは、他人の委託を受けて焼骨を収蔵するために、納骨堂として都道府県知事の許可をうけた施設をいう。」
 「他人の委託を受けて」という点に注意して下さい。自家用の遺骨の安置堂は、ここでいう納骨堂ではありません。自分の家に身内の遺骨を置くことは、一時的なものでなくても、違法ではありません。
 「収蔵」は納骨堂についていう用語です。納骨堂は「埋める」ことをしないからです。墓の場合もカロート、つまり納骨スペースに収納する形が多いのですが、地下に収納する形をとるので、直接地中に埋めるのでなくても、「埋」の時を使うのでしょう。墓のスタイルによっては納骨堂が地上にあるものもあるでしょうが、地に根ざした墓であればこの言い方が常識的に通用しているわけです。納骨堂も地下にあるものもあるのですが、これは地下室になっていて、埋める、という形から離れています。墓と納骨堂の中間の形のものもあり得るでしょうが、法的にはどちらかに区分されます。
 一時的に焼骨を安置する場合は収蔵とはいいません。慣習として、焼骨を一時、お墓に入れるまでお寺に預け、安置する。という方法も多いのですが、これは納骨堂とも、収蔵ともいいません。
 土葬(埋葬)はもちろん、お墓へ骨を入れる(埋蔵)場合も、その行為自体に永遠性があります。ところが、納骨堂は焼骨を預かって安置する場所で、安置は一時的なものもあり得ますから、特に一時的なものか(墓に入れると同じように)、永遠性のあるものか、を区別して考える実益が生じるのです。
 墓地法制定の際の国会での質疑で明らかにされていますが、一時的な焼骨の安置は(時間の限定が明らかでなくても)収納ではなく、お寺の施設がそのために納骨堂とみなされることはありません(別に納骨堂を経営するのは別問題です)。これはお寺でなくても同じことで、一時的に遺骨を預かることは、収納ではなく、納骨堂を経営することになりません(したがって許可は不要です)。
 さて、日本の法律は、船員法に定める水葬を別にすれば、土葬と火葬しか認めません。形としては墓か納骨堂だけとなります。しかし、外国にはクリプト(crypt)という形があります。強いて訳せば納屍堂、とでもなりましょうか。『ドラキュラ』などの映画で見たことがある人もいるでしょうが、棺に死体を収めたまま教会の地下室に収納するやり方です。あれは一時的に置くのではありません。墓と同じで永久に安置するのです。『シャーロックホームズの事件簿』の中の短編『ショスコムの古屋敷』にも出てきますが、一〇〇〇年来置いてある死体だということが書かれています。
 この制度は日本にはありません。墓地法にもこれについての規定はなく、この礼法に従って葬れば、刑法の死体遺棄罪にも当てはまらないでしょうが、実際には、「埋葬」に準じて法の適用があるかもしれません。これも、墓地法が、日本の風習、慣習と密接に結びついたものであり、慣習を離れての墓地法の解釈はあり得ないことを示唆している例だと思います。

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