閉じる


<<最初から読む

12 / 40ページ

試し読みできます

噂話 -5-

「……く、来るなぁぁっ!」

「……!」

 零の声に彼女はピクリと体を反応させると一度足を止める。そして、顔を伏せながら、ゆらり、ゆらり、と体を揺らし近づいて来る。

(――恐い、助けて、来るな)もはや、零の中で目の前に居る者が実の母だったという認識は当に無くなっていた。逃げなければ、解ってはいても恐怖のせいか体が動かない。足はガクガク震え全く言う事を聞かない。かろうじて、手だけは動いていた。零は唯一動く手で体を浮かせると一歩、また一歩とゆっくり後ろへ下がる。あと少し、あと少しで家の中に入れる。目の前の彼女もゆっくり、またゆっくりと近づく。

(――早く!早くっ!)零は死に物狂いで手を動かした。そして、ようやく体が家に入りきったところで零は急いで障子を閉めた。だが、まだ恐怖は終わらない……

 それでも、声が聴こえる。零の名前を呼ぶ声が彼にはもう呻き声にしか聴こえなかった。零はやっと少し足が動く、そう気付いた時彼は直ぐさま立ち上がり自分の家を逃げるように出ていった……

 

零は走った、とにかく走った。ひたすら逃げるように。零の見た母は、母では無かった。肌で感じる恐怖、あれは何か違う者だ。

これからどうしようか零は考えていた。家を逃げるように出てきた。家に戻る勇気が無い、またあの恐怖を思い出すだけで足が竦んでしまう。

 これからどうしようか……

「――取り敢えず、菜々樺の所にでも行くか……」

帰る場所を失った零が今、頼れるのは菜々樺だけだった。零の疑問は、未だ晴れずにいる。

(――あの白い光は何なんだ?何故、母さんに?)

失踪する人達の行方、忽然として消える人、零は先の事も踏まえ確信する。

「――これは、事故なんかじゃないよ……列記とした事件だ」

 零は恐怖を感じながらも、この謎の正体を知りたいと思った。原点は、絶対にあの祠にあるはず。祠の事を調べれば何かが分かるはずだと……

あくまで零の推測に過ぎないが、いま考えられる答え。零には他にも疑問が残る。何故、大人達は頑なに事件の事を話さないのかと……

「――やってやるよ、絶対に……」

 恐怖と戦いながらも、零は決意するのだった……


試し読みはここまでです。続きは購入後にお読みいただけます。

この本は有料です。閲覧するには購入する必要があります。
購入するにはしてください。
有料本の購入に関しては、こちらのマニュアルをご確認ください。
販売価格100円(税込)

読者登録

富樫 かづやさんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について