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まえがき

ブログを始めてから、8年近くになる。いろいろ好き勝手に書き散らしていて、あまり世間の評判を気にすることはないのだが、たまに「面白かったです」などと言われたりすれば、もちろんそれはそれでうれしい。「人気」の記事に特段の傾向があるわけでもないようだが、ひとつだけ、複数の人たち、特に(なぜか)女性から、「あのシリーズがいい」と言われているものがあって、それが「大人にいいたいこと」というカテゴリの記事だ。その中からいくつかをピックアップして少しだけ手を入れたのがこの本ということになる。

このシリーズは、簡単にいえば、子どもの作文スタイルで記事を書くというものだ。単に文体を子どもっぽくするだけではなく、自分の心の中に住む「内なる10歳」に語らせること、つまり、「10歳の子どもの目で見たら、世の中はどう見えるだろう」という視点を意識して書いている(当初は9歳、「3年」と表記していた。当時は実際に自分の子どもが3年生だったからだが、しばらくして4年生に「成長」させた後、そのまま今に至っている)。もちろん、実際の10歳がこんなことを考えたりするかどうかははなはだ疑問だが、まあそこは「見た目は子供、頭脳は大人」の某名探偵の例(?)もあることだし、ご了承願いたい。

子どもの視点で書くことには、いくつかのメリットがある。ひとつは素直に書けることだ。大人が陥りがちなニヒリズムや皮肉、見栄や世間体などから離れ、ものごとにまっすぐ向きあうことができる。また、将来を意識した議論をしやすいというのもいい。大人が将来を語ると、どうしても教条的になったり、あるいは情緒的な思い入れを語ったりしてしまいがちだが、子どもの視点であれば、もっと率直に、自分のこととして将来をとらえることができる。さらに、そのまま書くとドロドロした大人の利害やら思惑やらが透けて見えてしまう問題を子どもの問題に置き換えるといったテクニックが使えるのも面白くて気に入っている。

大人の御託はここまで。読者の皆様も子どもに戻って、お楽しみいただければ幸いである。

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最終更新日 : 2011-11-16 14:33:39

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たばこはきけんです 三年一組 山口 浩

ぼくは、大人の人に言いたいことがあります。ぼくのうちではだれもたばこをすわないのですが、大人の人の中には、たばこをすう人がいます。男の人が多いですが、女の人も多いです。

ぼくは、たばこはとてもあぶないと思います。たばこは火事の原いんにもなるし、体にも悪いそうですが、子どもにとっては、それい上にきけんなものだと思います。

こないだ、お母さんと買い物に出かけたとき、電車の駅で、たばこをすいながら歩いている人がいました。その人は手にたばこをもっていて、大きく手をふりながら歩いていました。その人のそばを通りすぎるとき、その人の手に持ったたばこが、ぼくの顔のすぐ近くまできて、びっくりしました。

学校でインターネットのじゅ業があったので、調べてみました。「たばこ しつめい」と入れてけんさくしてみたら、たくさんのホームページに、たばこの火が目に入ったという事このことが書いてありました。どれも「失明寸前だった」とか「失明のおそれがあった」とか書いているだけで、本当にしつめいした事けんはなかったようですが、それでも、しつめいするかもしれない事こは起こっていることがわかりました。

たばこの火は、八百度くらいあるそうです。そんなものが目に入ったら、とてもいたいと思います。大人の人がたばこをもった手を下ろすと、ちょうど子どもの目のあたりにきます。ぼくたちの目の前で、八百度の火がぶらぶらしているのです。

お父さんは、「ほう丁をふり回しながら歩いているのと同じぐらいあぶない」と言っています。ぼくが「ほう丁をふり回しながら歩いていたらたいほされちゃうよ」と言ったら、お父さんは、「だったら火のついたたばこを持ったまま歩いている人もたいほしたらいいかもね」と言いました。ぼくは、たばこをすう人みんながたいほされればいいとは思いません。みんな知らないだけなんだと思います。

大人の人でたばこをすう人は、身長三メートルのきょ人がたくさんいて、みんなたばこを手に持って歩いていたらどうなるか、考えてみてください。きょ人が手に持ったたばこは、大人の人の目のあたりにくるかもしれません。きょ人が手を大きくふって歩いていたら、目にたばこの火が入ってしまうかもしれません。それはしかたのないことでしょうか。きょ人のいるところでは気をつけなさいっていわれてもしかたがないのでしょうか。

心のやさしいきょ人は、きっと、「大人の人の目にたばこの火が入ったらたいへんだから、歩いているときにたばこをすうのはやめよう」と思ってくれると思います。「大人の人はちょろちょろしてすぐにかけだすから、自分が気をつけよう」と思ってくれると思います。たばこをすう大人の人も、そうしてくれたら、ぼくたち子どもはもっと安心して外を歩けると思います。心のやさしい大人の人に、なってください。

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最終更新日 : 2011-11-16 14:33:39

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著者プロフィール

山口 浩(やまぐち ひろし)

駒澤大学グローバル・メディア・スタディーズ学部准教授。専門はファイナンスと経営学。集合知メカニズムと仮想経済について研究中。ブログ「H-Yamaguchi.net」を運営。自称「知的雑食系」、得意技は「面白がる」。ブログではたまに「内なる10歳」が顔を出す。

H-Yamaguchi.net


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最終更新日 : 2011-11-16 14:33:39

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