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オンライン探偵

 ――MASAさんがログインしました――

【氷結ファイター】おはようございます!

【MASA】おはよう。今日は早いね。

【氷結ファイター】今日は大学休みなんで、朝からレベル上げす。おかげでレベル28すw

【MASA】おめでとう。

【氷結ファイター】ありです。早く追いつきたいす!

【MASA】ところで氷結くんさ、K大学だったよね?

【氷結ファイター】そうです。

【MASA】顔広い方?

【氷結ファイター】だと思います。

【MASA】法学部の森田由香って女の子が殺されたニュース知ってる?

【氷結ファイター】ちょろっとなら。隣の県で死体が発見されたやつっすよね?

【MASA】うん。その女の子、サークルとか所属してたのかな?

【氷結ファイター】さぁ~どうなんでしょうね~。

【MASA】調べてみてくんない?

【氷結ファイター】なぜ僕がw

【MASA】やってくれたら1000G払うよ。

【氷結ファイター】マジすかwなぜそんな大金をw

【MASA】ちょっと気になってね。どう?

【氷結ファイター】やりましょう!

【MASA】よろしく。じゃあ今日も一緒にダンジョン行こうか。

【氷結ファイター】よろしくお願いします!

 

――氷結ファイターさんがログインしました――

【MASA】こんにちは。

【氷結ファイター】お久しぶりです!

【MASA】久しぶり。

【氷結ファイター】そういえば

【MASA】?

【氷結ファイター】この前の件、調べましたよ!

【MASA】あぁ、どうだった?

【氷結ファイター】なんかボランティアのサークルに入ってたみたいすね。

【MASA】へぇ、そうなんだ。

【氷結ファイター】男3人女5人の少人数サークルみたいす。今は女4人ですけど。

【MASA】ありがとう。

――MASAさんがトレード申請しました――

【氷結ファイター】うお!マジすか!1000Gももらっていいんすか!

【MASA】約束だからね。

【氷結ファイター】ありがとうございます!

【MASA】ところでその中の何人くらいが車を持っているんだろうね。

【氷結ファイター】ちょっと待ってください、このパターンはもしや?

【MASA】調べてくれたらもう1000G払うよ。

【氷結ファイター】やりましょう!

【MASA】早っw

【氷結ファイター】www

【MASA】頼んだよ。

【氷結ファイター】でもなんでそんなことを調べるんです?

【MASA】だって車がないと、隣の県まで死体を運べないでしょ。

【氷結ファイター】えぇ!サークルの中に犯人がいるってことですか!怖いすよw

【MASA】ただの探偵ごっこだよw

【氷結ファイター】もしそうなら、そんなこと調べて大丈夫かな~。

【MASA】氷結くん、くれぐれも気をつけて。

【氷結ファイター】怖いすよw

 

――氷結ファイターさんがログインしました――

【MASA】こんにちは。

【氷結ファイター】こんにちはです!調べましたよ!

【MASA】おぉ、どうだった?

【氷結ファイター】男2人女1人が車持ってましたね。

【MASA】車種は?

【氷結ファイター】ビートルとレグナム、あとは女がデミオすね。

――MASAさんがトレード申請しました――

【氷結ファイター】あざっすwww

【MASA】ちょっと待ってて。

――MASAさんがログアウトしました――

――MASAさんがログインしました――

【氷結ファイター】どうしたんすか?

【MASA】車の画像検索してた。

【氷結ファイター】なるほど。

【MASA】レグナムの奴調べてみて。

【氷結ファイター】なぜw

【MASA】大きいから死体運びやすそうだし。

【氷結ファイター】ビートルやデミオでも運べますよ。

【MASA】まぁ、勘だよ。

【氷結ファイター】もちろん報酬は……。

【MASA】1000G。

【氷結ファイター】やりましょう!何を調べます?

【MASA】森田って子との関係かな。

【氷結ファイター】そいつが殺したってことですか?ヤバくないすか?

【MASA】氷結くん、本当に気をつけて。

【氷結ファイター】マジで怖いすよw

 

――氷結ファイターさんがログインしました――

【MASA】あ、久しぶり。心配してたよ。

【氷結ファイター】お久しぶりです!MASAさんに頼まれたことでゴタゴタしてて大変でした!すごいことになりましたよ!

【MASA】なんか解決したっぽいね。ニュースで見たよ。

【氷結ファイター】違うんすよ!オレと仲間で自首させたんすよ!レグナムの奴を!

【MASA】え、そうだったんだ。

【氷結ファイター】MASAさんの推理が見事的中でした!

【MASA】推理じゃなくて勘ね。

【氷結ファイター】調べたらそいつ、森田って子と少しいい感じだったらしいんすけど、その子が死んでからは、なぜかそんなことなかったかのように振舞ってたらしいす。

【MASA】ふむ。

【氷結ファイター】あんなにも好意を寄せてたのにって、周りもちょっと怪しんでました。

【MASA】なるほど。

【氷結ファイター】それで仲間と問い詰めたらそいつ、急にガタガタ震えだしたんで、事件の日に一緒にいるところを見たってカマかけたら、泣きながら全部白状しましたよ。

【MASA】そんなことしたんだ。ある意味氷結くんもすごいね。

【氷結ファイター】そうすかw

【MASA】口論の末ってとこかな?

【氷結ファイター】みたいですね~。男と女は何があるかわかりませんね~。

【MASA】だね~。わかったありがとう。すっきりしたよ。

――MASAさんがトレード申請しました――

 

「正志!ご飯できたから降りてきなさい」

 母が下の階で、声を張り上げている。階段を下りると、夕食がテーブルの上に用意されていた。おかずを小分けにし、一つずつトレイに乗せると再び階段を登る。

「また上で食べるの?だいたい由香ちゃんがあんなことになったのに、もうゲームばっかりの生活に戻って……」

 母の小言を無視して部屋に戻る。部屋の電気は、基本的に消して過ごすのが僕のスタイルだった。パソコンの前で一日中過ごすため、机のスタンドライトさえあれば事足りる。食事もそこで済ませると、僕はすぐ横のカーテンを開けた。スタンドライトを消して、二階の窓から外を見る。部屋が暗いため、夜でも外の景色がよく見えた。道路を挟んで向かい側に、森田由香の家があった。

もう由香ちゃんの姿を見ることはできない――。

僕は椅子に背を預けた。

 あの日、由香ちゃんの家の前に一台の車が停まった。今でこそ、あの車の車種はレグナムだったとわかる。夜中だった。いつもは一人で帰ってくる由香ちゃんだったが、その日はその車から降りてきた。辺りを警戒していたようだが、部屋を暗くしていた僕にはよく見えた。由香ちゃんにもついに恋人ができた。そう思った。昔はよく一緒に遊んだからなのか、嬉しいような寂しいような、そんな気持ちになった。別の日、今度は夜中にレグナムが由香ちゃんを迎えに来たことがあった。真夜中のデートのようだった。その日を最後に、由香ちゃんの姿を見ることはなくなった。数日後、ニュースで由香ちゃんの写真を見るまでは。

 目に溜まった涙を指先で拭う。窓を開け、外の風を部屋の中に入れると、陰鬱な空気が少し薄まったような気がした。僕は椅子の上で一つ伸びをすると、スタンドライトのスイッチを押した。

――MASAさんがログインしました――

 

おわり


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最終更新日 : 2011-11-08 18:46:15

この本の内容は以上です。


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