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月が誘う/圓眞美

 こんなに月の奇麗な夜は、金属バットが現れる。その名のとおりでこぼこの金属バットを引き摺って、アスファルトをからからいわせながら夜の町を徘徊する殺人鬼だ。出遭えば必ず頭を割られて殺される。身を守る方法はただひとつ、持ち物すべてを差し出して、空いた両手で頭を割られないよう庇えばいい。そうして闇に消えるまで、息を潜めて待てばいい。

 だから少年は、金属バットに出遭ったときに取るべき行動を知らなかったわけではなかった。ましてや怯えて震えているのでもなかった。それでもしっかりと両手を胸に引き寄せたまま、動かない。金属バットは血まみれのバットをからからいわせながら少年に歩み寄った。寸の間少年と睨み合う。にいっと笑う。

「今夜だけは見逃してやるよ。今宵はひときわ月の奇麗な夜だからね」歌うように喉を鳴らし、たちまちからからと掻き消えた。

 さやけき月の下、少年の手のなかで仔犬が不安げにくうん、と、鳴いた。


奥付



月を抱いて眠る


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著者 : NOIFproject
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