目次

閉じる


ヒタリヒタリと

ドアの向こうで音がする

両手を伸ばせば届くほど

狭い廊下の真ん中で

私は目覚めた

 

目の前には黒いドアが一つ

その向こうからは不気味な音がする

ヒタリヒタリ

音が近づいてくる

ヒタリヒタリ

ビチャン!

音がドアの直ぐ向こうでした

私はドアと反対の方へ走り出す

意味も分からず恐怖だけが体を動かす

 

何もわからない

考える事ができない

怖い

何もわからない事が

怖い

わかるはずの事さえも不安になる

私は「私」でいいのだろうか

 

私が駆け抜けた後は

暗闇に飲まれ何も見なくなる

それでも音は確かに近づいてくる

ヒタリヒタリと

 

どれだけ走ったろうか

少し向こうにドアが見える

出口なのかという期待が

疲れ果てた体を動かす

白いドアの前に立ち

慌ててドアノブに手をかけた

音はもう近い

慌てているせいかなかなか開かない

ガチャガチャと乱暴にドアノブをまわすけれど

ヒタリ

空廻るばかり

ヒタリ

音はもう直ぐ後ろ

ビチャン!

大きな音がした瞬間

ようやくドアが開いた

私は転がり込むようにドアの向こうへ

そのまま振り返ることなく

ドアを力一杯に閉めた

 

床にへばりつき肩で息をしながら

私はドアの方を見た

そこには黒いドアがあった

最初に見たドアと同じ黒いドアが

私の足掻きをあざ笑うようにそこにあった

ヒタリヒタリ

音がする

ヒタリヒタリ

今度はドアとは

ヒタリヒタリ

反対の方向から

ビチャン!


この本の内容は以上です。


読者登録

rocksanさんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について