閉じる


<<最初から読む

132 / 140ページ

 今日はいつもより1時間も早く家を出た。駅前で不安になる。鍵は締めただろうか? 踵を返し家へと戻る。施錠を確認するとちゃんと締めてある。よかった。待て。クーラーは消したか? 部屋に入り確かめる。よし。再び駅に着く頃にはもう汗だくだった。はて? 鍵は締めただろうか?

願い事

 願い事を叶えてやると尊に言われて流れ星を見に来た。「ここは特等席なんだ。しし座流星群の時もすごかったんだぜ」草むらに毛布を敷き二人で座る。だけど空には雲がかかっていて月も星もなにも見えない。「ちぇ。おかしいなぁ」わたしは尊の手をにぎる。いいんだよ、流れ星なんて。

願い

 鉄柵の向こう側ではゾンビたちが、ただ立ち尽くし、夜空を見上げている。いつもはあれほど凶暴な連中がだ。流れ星がひゅんと空を駆けるたび、ゾンビたちは、あぁぁだのうぅぅだのと、言葉にならない唸り声を漏らしている。彼らはいったい何を願っているのだろう。

打者

「金属バットは品切れです」スポーツ用品店のガラス戸に張り紙。いまさらだな。今宵、この町に流星群が落ちてくる。球場へ着くとすでに男たちは素振りを始めている。早速、先駆けの流れ星がおれの頭上に降ってきた。おれはそいつを通天閣打法で打ち返す。流星よ。再び宇宙(そら)へと帰るのだ。

耳かき

 耳かきをしていると、ずっと引っかかっていた言葉がぽろりと落ちてきた。散り散りとなった文字たちを、ティッシュの上で並べ直す。やはり分からない。なぜこんなことを言うのだろう。文字列が急にふわりと浮き上がり、彼の乾いた口調がよみがえる。心臓がきゅうっと締めつけられる。

読者登録

laybackさんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について