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帰省中

「帰省中なんだ」「分かってるよ。だからこうして電話してるんじゃないか」南米から日本に帰ってきた本村に電話をするとどうも様子がおかしい。「帰省中なんだ」うわごとのように奴は同じ言葉を繰り返す。そこで電話は切れてしまった。数日後。自宅で腹を喰い破られた本村の遺体が見つかった。

人を呪わば穴二つ

 憎くてしょうがない上司がいた。死ねばいいのに。気がつくと呪詛の言葉が自然と口からこぼれていた。良くないというのは分かっていた。それでも止めることは出来なかった。おれは同じ言葉を何度も何度も布団の中で繰り返した。あくる日目覚めたらおれの身体は女になっていた。

Mr.TV

「一年ぶりにやっと会えると思ってたのに」「そう悲しむなよ」PCは落胆する扇風機を慰める。「元気でやってるのかしら。彼」「もうブラウン管TVのことは忘れたほうがいい。それよりあいつはどうだい?」PCは液晶TVのほうにちらりと目をやる。「いやよ。あんな薄っぺらい男」

やればできる子

 行く先々でやればできる子という称号を欲しいままにしてきた俺が満を持して書き上げたのがこの小説だ。芥川賞直木賞など楽勝でW受賞、ノーベル賞も夢ではなかろう。俺は意気揚々と出版社の戸を叩く。「ボツ」「なにぃ!」「もう少し頑張ろうね。やればできる子なんだから」「うん」

腐れ縁

 お互い独り身になっちゃったし飲みにでも行くかってことで腐れ縁のユキと居酒屋へ。さんざん相手の相手をdisり合っちゃ、だよな! だよね! なんて肩組んで店出てきてさ。帰り道へたり込むユキを公園で座らせてるといつのまにか二人の顔の距離が縮まって、おれたちキスしてた。

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