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花火

「すごくきれいだったよ」少年は帰り支度中の老花火師に話しかける。「そうか。そりゃあよかった」「来年もやるよね」「ああ。お前さんが観に来てくれるかぎりはな」少年は去年の夏のやりとりを思い出す。老花火師は現れなかった。世界に一人取り残された少年は小さな手で線香花火を握り締める。

twnovel

 140字で小説なんて書けるわけないじゃん。私がそう言うと彼は黙ってポケットから携帯を取り出し文字を入力し始める。ピロンと私の鞄の中で音がする。目の前の彼から届いたメールの中身は見事に140字丁度の物語で、でも最後の #twnovel って何? つい癖でね。彼は悪戯っぽく笑った。

夏祭り

 せっかく浴衣着てきたのになんですぐそうやって脱がそうとするん。浴衣姿がかわいいからやん。かわいいと思うんやったらもっと見てくれたらええやんか。せやな、明るい部屋でじっくり見るわ。手を引かれる。うち着付けできひんよ。祭りの日は着付けの人もおるから。男はほんまあほや

母ちゃんの味

 あんたは本当に親不孝者だよ。母さんを残して先にいくなんて。しょうがないよ。息子は笑う。最後に食べたい物はあるかい? 母ちゃんの味がいいな。母さんの味? 朝マック。いつも仕事明けに買ってきてくれたもんな。あんたは玄関で寝てたりしてねぇ。ありがとう母ちゃん。ごめんな

家守

 宿の人。家守が出ますので窓は必ずお閉めになってエアコンを使って下さいだって。こんな夜風の気持ちいい日にエアコンとかwww ないわ。自販機で酒を買い部屋に戻るとカーテンが風に揺れている。視線を感じる。俺は天井を見上げる。男と目が合う。どんよりとした目。爬虫類の目。

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