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 蚊だ。こっちの世界にもいるんだ。叩き潰した。派手な音がしたせいか薫さんが目を覚ました。どうしたの? なんでもないです。薫さんは顔に寄ってきた蚊を手で追い払う。蚊は殺してはダメよ。警報フェロモンを出して仲間を呼ぶから。薫さんは空を見る。変ね。黒い雲が近づいてくる。

合コン

 町おこしのために企画された大規模合コンに参加してみることにした。その数なんと1200人。つまり男女それぞれ600人が一堂に会するのだ。いくら喪男の俺でもさすがに出会いがあるだろう。そう思った。乾杯の音頭からすでに3時間が経つ。まだ俺の自己紹介の番は回ってこない。

電話

 着信音が鳴る。慌てて家を飛び出す。こんな時間からどこいくの! 背中に母親の声。電話だよ電話。糞狭い家だから自分の部屋などない。親や妹の目の前で女と電話なんかできない。向こうもそれを知ってるから長めにコールを鳴らしてくれる。つか先にメールしろよ。ったく。もしもし?

洗い物

 カチャカチャと食器が優しく当たる音。「ねえ、どうだったのママ?」「あなたの綺麗な手を肌荒れから守ります。それがプロポーズの言葉だったわ。ね? あなた」「うん」広い背中越しに穏やかな声が返ってくる。「ふうん。それでパパがいつも洗い物をしてるんだ」

ひとり

 朝起きたら何かがちがかった。TVを点けても砂嵐。なぜかネットも繋がらない。仕方がない。シリアルを流し込んで家を出た。街にひとけはまるでない。車が一台も走ってない。とぼとぼ歩いて駅に着いた。電車が動いている気配もない。静かだ。世界に俺一人だけが取り残されたようだ。

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