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 目が覚めると窓の外を見慣れぬ駅舎が過ぎてゆく。また寝過ごしたか。そう思った。ところがおかしい。電車は一向に停まる気配を見せない。車両にはいつのまにか私一人だけが取り残されている。終着駅で降りようとすると扉の外に昨年亡くした母の姿が。怒ったような顔で「戻りなさい」

ふわふわ

「これちがーう。だってたまごがふわふわしてないもん。ママのオムライスはもっとふわふわしてるんだよ」「そう」おばあさんは淋しそうな顔をする。「でも、おいしい。バアバのオムライスもおいしいよ」「ありがとう」おばあさんは微笑む。「さぁそろそろミケもごはんだわね」にゃあ。

仕事

 ほら、なにしてるの。ぼうっと突っ立ってないで、声をかけに行かなきゃ。迷ってるお客様の背中をそっと押してさしあげるのが私たちの仕事よ。先輩はよおく見てなさいと言い残し、客の元へ歩み寄る。お決まりになりましたか? 先輩は返事も待たずに自殺志願者の背中を優しく押した。

ペットショップ

「ママ見て、かわいい」「あらかわいいわねぇ」つぶらな瞳。札には生後8ヶ月と書かれている。「僕この子ほしい」「ペットを飼うのは大変なのよ。ちゃんと世話できる?」「できるよ!」「人間がかわいいのは子供の頃だけよ」店の奥から中年男が睨みつけてくる。「あれはきっと売れ残りね」

「 」

 もうちょっと右、うんそのあたり。「 」彼の指ファインダーにうまく私と景色が収まったようだ。カメラなんて持ってないくせに。そう言うと、記憶に焼き付けるからいいんだ。なんて。ひとって時がたてばびっくりするくらい忘れるんだよ。私は年下の彼氏の指をぎゅっと握りしめる。

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