閉じる


<<最初から読む

25 / 140ページ

 被災地への電力供給を途切れさせない為にも皆で節電しよう。誰ともなくつぶやかれた声が広まる。ぽつり、またぽつりと街からあかりが消えてゆく。やがてやさしい闇が街を包む。子どもが寝静まった頃、街はしずかに揺れはじめる。数多の命がうしなわれた日。また新たな命が生まれた。

死にたい男

「死にたい男」は突然、小説を投稿し始めた。どうせ救いのない結末になるのだろう。誰もがそう思いながら眺めていた。ところが数分おきに更新される小説の欠片は希望を手繰り寄せるように前へ前へと進んでゆく。夜が明ける頃、ついに男の小説は結末を迎える。ハッピーエンドだった。

ヘルメット

「ヤス、ヘルメット取ってこい」「はい!」飛んでいったヤスはすぐに戻ってくる。「アニキ! ヘルメットはありません!」「なんだ、そんなものも用意してねぇのか。じゃあ鍋を持ってこい。ありったけだ」「アニキ、極道が鍋をかぶって逃げるんですかい?」「馬鹿野郎。炊き出しだ」

 気が付くと「死にたい男」は瓦礫に埋まっていた。幸い右手には携帯が握られている。「クソが。まだ生きてるよ」男は呟いた。「良かった」「安心しました」リプライが殺到する。普段「死にたい」としか呟かない男にだ。「クソが」ふっと瓦礫の重みが抜ける。明かりが差し込んでくる。

くまさん

 くまさんが目をさますとあやちゃんの姿がベッドにありません。部屋の中に物は散乱し、窓のガラスは割れています。地震でもあったんだろうか? くまさんはあやちゃんのことが気になります。僕がいないと寝られない子なのに。くまさんは割れた窓をくぐり抜けます。必ず見つけるからね。

読者登録

laybackさんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について