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本物

 目当てのコインロッカーを見つけた。もう一度左右を確認する。旅行者風の外国人が数人。だが私のことを気にするものはだれもいない。鍵を差し込み左に回す。中には茶色の紙包み。公衆トイレの個室で私はそれを開ける。思わずため息が漏れる。生まれて初めて目にする。これが「本」なのか。

春雪

 雪が舞っている。3月だというのに。予報も見ずにスプリングコートを羽織り颯爽と家を出たはいいが、なにあの人寒そう、てな目で女子高生にガン見される始末。なんなんだこの仕打は。君たちの丈短スカートよりマシだよ、と睨み返すも鼻で哂われる。やれやれ。露出狂には冬の時代だ。

GAMEOVER

 悲しげなメロディ。智の背中越しにGAMEOVERの文字が見える。「時々思うんだよな。実はおれもゲーム内のキャラで、どこかのだれかに操縦されてるだけなんじゃないかって。何をやってもうまくいかないのはおれが悪いんじゃなくて、ただそいつがゲーム下手なだけなんじゃないかって」

「男はそもそも馬鹿だから生きる価値がないの。だから今では男の子が生まれると性器だけ切り取ってすぐに殺すのね。で、切り取った性器は野に放ちます。厳しい生存競争に勝ち残った性器がこれよ」先生は先割れミミズを水槽から取り出した。「では今からセックスのお手本を見せます」

地下街

 梅田地下街に閉じ込められることになろうとは夢にも思わなかった。聞くところによると地上の建物のほぼ全てが倒壊しているそうだ。「そうだ」というのはまだ実際には見ていないからだ。出入口は崩落していて使えない。俺のいる泉の広場には水を求める人々が続々と集まってきていた。

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