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◆クマくんのヘルメット

 

シマリスのスリーピーは今日も森でどんぐり集め。

「そろそろ北風が冷たくなってきたなあ。早くしないと。」

どんぐりを拾っては口に入れ、また拾っては口にいれる。

もぐもぐもぐ。

あ、いけない。うっかり食べちゃった。

 

するとそこにクマの阿部さんが現れ言いました。

「キミのほっぺは、なんでそんなに伸びるんだい?」

スリーピーは答えました。

「頬袋っていって、ここにた〜くさんの食べ物を蓄えるのさ。」

「ふ〜ん。そうなんだ。」とクマくん。

 

「ところでキミはどうして冬眠するんだい?」

クマくんが聞くと、

「起きてると眠くなるからさ。」

とスリーピー。

「ふ〜ん。そうなんだ。」とクマくん。

 

「ところでクマくんはどうして冬眠するんだい?」

スリーピーが聞きました。

「いやあ、冬場が仕事がないんで、寝るぐらいしか

やることがないんだ。」とクマくん。

「ドバイや上海に行けば出稼ぎの仕事があるんじゃないの?」

スリーピーが聞くと、クマくんは腕組みして

記憶を辿りながらゆっくりと答えました。

「えーと、そうそう、ネットで調べてみたんだけど、

確かにドバイや上海に行けば仕事はたくさんあったんだ。」

「どうして行かないの?」

「えーと、そうなんだ、行こうと思って条件を調べたら、

ヘルメット持参ってあったんだ。


「向こうで貸してくれないの?そんなもの。」

「貸すと、持って帰っちゃうやつが多いんだって。そう、それで

ヘルメット買いに行ったら、ほら、ボクって剛毛だろ、

ヘルメットかぶっても毛の弾性ですぐにとれちゃうんだ。」

「ふ〜ん。それじゃしょうーがないね。」

 

ヘルメットで死ぬかと思った!

 

シマリスのスリーピーはいつものように

冬眠に備えてどんぐり集め。

「あー忙しい、忙しい。でも仕事があるって

幸せだよな。あ、いかんいかん、眠くなってきた。

急がなくては!」

 

と、その時、森の奥のほうからうめき声が聞こえてきました。

「う〜…。苦しい…。だ、だれか助けて…く…れ…」

スリーピーがすっ飛んでいくと、そこにはクマくんが

倒れています。頭にはヘルメットをかぶったまま

苦しんでいます。


「ど、どうしたんだい!クマくん!」

「あご…あご…」

「あ"!こりゃたいへんだ!」

ヘルメットのあごひもが喉に食い込んでいます。

 

「今、外してあげるからね!」

スリーピーはあごひもの留め金を外そうとしましたが、

剛毛の弾性できつく締め上げられているため、スリーピー

の小さな手ではビクともしません。

「キミの手…じゃ…む、り…だよぉ…」

「どうして?」

「だ,ってボクの手…で…も…ゲホ!…むり、だ…ったんだから…」

「なるほどそうだよね。えーと…、そうだ!」


スリーピーはげっ歯類自慢の前歯で革のあごひもを

かじり始めました。

「あ、あ、ハハハハッ…」

クマくんが笑いました。

「なにが可笑しいんだい?」

「し、振動が…伝わって…、く、くすぐったい…」

「くすぐったいの?苦しいの?どっち?」

「苦しい…」

 

かじったあごひもの切れ目が、剛毛の弾性で、Vの字に

広がっていき、ヘルメットの中からゴリ、ゴリゴリっと不気味な

音が聞こえはじめた瞬間、あと5mmほどの幅を残してあごひもは

ぷつん!と切れて、ポン!という奇妙な音とともに、ヘルメットは

森の奥めがけて飛んでいき、無回転のまま50mほど離れた薮の中に落下しました。

「あー、びっくりした。死ぬかと思った!」とクマくん。

「そうだね。ボクが来なければ確実に死んでいたと思うよ。」

「そうだね。とにかくありがとう。助かったよ。」

「そうだね。助かったね。」

 

「ところでいったいぜんたい、どうしてこんなことになったんだい?」

「柔軟剤であたま洗ったらヘルメットがかぶれたんだ。でも

押さえてないと浮いてしまうんで、あごひもで押さえておいたんだ。」

「ふーん。その時は苦しくなかったの?」

「うん、苦しくなかった。それでヘルメットをキミに見せようと

思って歩いていたら、だんだん柔軟剤のパワーが落ちてきて、

だんだん苦しくなってきた。」

「途中で外せば良かったんじゃないの?」

「いや、苦しいと気付いた時には、もうきつくて外せなかった。」

「ふーん。それじゃあ、しょーがないね。」

 

クマくんは腕組みをしながら寂しそうに言いました。

「これじゃ、やっぱり仕事にはいけないな…」


「そっかあ。本来は命を守るためのヘルメットに殺されたんじゃ

シャレにならないしね。あ、そうだ!頭の毛を刈ればいいんじゃないかな!」

「お。そーか!刈ってしまえばいいんだ!…いや、待てよ…」

「何か問題でも?」

「ヘルメットの部分だけ毛が無いって、カッパみたいでおかしくないか?」

「うーん、じゃ、ヘルメットの内側の形に合わせて毛を残しておけばいいん

じゃないかな?」

「なるほど。そうすればカッパには見えないよな。」

「そうだよ、アダムスキー型みたいで、かなりヘンだけど、

カッパよりは全然マシだね。」

 

理不尽なカメくんの要求

 

シマリスのスリーピーは今日も森でどんぐり集め。

「ついに年が明けてしまった。早くしないと。」

どんぐりを拾っては口に入れ、また拾っては口にいれる。

もぐもぐもぐ。

あ、いけない。また食べちゃった。

 

するとそこにウサギのスピーディーがやってきて言いました。

「あれれ、まだどんぐり集めんてるの?いったい何個集めるつもりなんだい?」

「えーとね。最初は500個ぐらいでいいかなと思ったんだけど、

よく計算してみたら、それじゃ足りなんだ。」とスリーピー。

「それで計算したらいくつになったの?」

1919個なんだ。」

 

「へっえー!ずいぶん沢山必要なんだね。」

「そうなんだ。最初からきちんと計算すれば良かったんだけど、

数字を書いた紙を無くしちゃったんだよ。」

「相変わらず段取り悪いなぁ、リスくんは。。。」

 


そこへカメのスローリーがやってきて言いました。

「おーい、リスくん。ボクの分のどんぐりは集めてくれたかい?」

「あ、だいたい集まったんだけど、これでいいのかな?」

とスリーピーはビニール袋いっぱいに入ったどんぐりを

カメくんに渡しました。

カメくんは袋を開けて、にゅーっと首を伸ばして中をのぞいています。

まだのぞいています。

しばらくして言いました。

「これじゃちょっと足りないな…」

 

スリーピーはちょっとイライラしながら言いました。

「だってこれでいいって昨日は言ったじゃないか。また数の変更かい?」

「うん、今回はちょっと数にこだわりたいんだ。」とカメくん。

「その分のお金は払ってくれるんだろうね?」とスリーピー。

「いやぁ、それはちょっと分からない。」とカメくん。

見かねたウサギくんが何か言おうとしたのを手で制しながらカメくんは言いました。

 

「でもよく考えてごらんよリスくん。ボクがお金を払うかどうかは

別にしても、キミがこうやってボクのぶんまでどんぐりを拾うことで、

どんぐりの拾い方がどんどん上手くなって、短い時間に沢山のどんぐりを

拾えるようになったじゃないか。キミの実力アップにボクは

貢献しているんだから少しは感謝してくれてもいいんじゃないか?」

ちょっと呆れた様子のウサギくんが我慢できずに言いました。

「あのねぇ、カメくん。キミはそんなどーでもいいようなことに

理屈をつけてこだわっているから、いつまで経っても仕事が遅いんじゃ

ないのかな。それにリスくんも相変わらずお人好しだな。カメくんは

カメなんだからペースを合わせているとカメになっちゃうぞ。」

 

これを聞いたカメくん。何ごとも無かったような顔で言いました。

「あーあ、だからクリエーターじゃないやつはイヤだな。

ウサギくんにはいくら説明しても分かるはずはないよ。芸術家のこだわりって

もんは。じゃ、リスくん、明日までによろしく頼んだよ。」



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