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窓は開け放たれカーテンは揺れていた。つまり部屋は密室という訳ではなかった。残念ながら。
「これを見てください」
鈴木くんが言った。
見ると床は水浸しで割れた金魚鉢の破片が散らばっていた。キラキラ。金魚鉢がのっていたと思われるテーブルには、月刊・狩人の友1月号が開かれており、その横には4足歩行の何者か(たぶん猫と思われる)の足跡が残っていた。その足跡は床へと飛び降り机の上にジャンプして、部屋の外へと続いていたのだった。机にはスタンプセットが揃っていた。探偵は鈴木くんの顔を見た。探偵があまりに真っすぐに見るので第一発見者の鈴木くんは口をぬぐい、目をそむけた。鈴木くんの手はなぜか黒かった。
   
   

すべての証拠は以下のような状況を示しているように思われた。まず開いた窓から野良猫が侵入。金魚鉢を見つけ中の魚を捕ろうとして、金魚鉢がテーブルから落下。床を水浸しにした。猫は床で跳ねる金魚をくわえると机の上にジャンプして、また悠々と窓から出て行った。
「カメです」と鈴木くんが言うので、探偵はまた鈴木くんを見た。
「だから、金魚鉢の中にいたのはカメなんです」
   
   

「なるほど、カメか」と探偵は言った。
それは探偵らしい、落ち着いた口ぶりだった。探偵は、よく整理された机の上をもう一度、検分し。そして見つけた。決定的な証拠を。

謎はとけた!

 


「犯人はおまえだっ」
  
探偵の指はまっすぐに鈴木くんを指していた。鈴木君の額から、どっと汗が流れた。
「なっ、なに馬鹿なことを。証拠はあるんですか?そうだ証拠を見せてください!」
探偵は答えた。
「証拠はこれ、このネコの足跡スタンプだ。テーブルに残された足跡と合わせてみよう。なっ。ピッタリじゃんかよ。そして鈴木くんのその手。黒いよね。それはスタンプを押すとき、間違ってスタンプ台に手をついちゃったんでしょう?これだけの証拠があっても、まだいい逃れをするのかね。鈴木くん」
鈴木くんはガックリとうなだれた。
  
  

5 エピローグ

「それでカメはどこにいるの?」と探偵は言った。
鈴木くんは答えた。
「海です」
鈴木くんによれば、王さまづきのカメは仕事上のことで悩みごとを抱え、ついに耐えきれなくなって海に帰ったそうだ。でも、それを王さまに知らせると、王さまはプンプンしちゃうから鈴木くんは咄嗟にこの狂言を思いついたそうだ。探偵はこの話を聞くと、冷静な探偵らしく5秒ほどの間をおいて言った。
「へー。海ガメだったんだ」
  
 

   
    
※この小説は、森絵都さんの「王様とカメと鈴木くん」へのオマージュとして書かれた。パクリじゃないよ。オマージュ。ねんのため。

この本の内容は以上です。


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