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一 進化 一

 

何もかもを焼け焦がすように照り付ける太陽。全てをなぎ倒すように激しく吹きすさぶ風。何十メートルもの高低差の波がひっきりなしに引き続く海。しかし、その激しい天候の海上とは反対に、打って変わったように海中は穏やかで、ゆっくりと漂うように海水が流れていく。

 

合体しよう。

 

一つになろう。

 

声も音もしない。ただ、意志だけが、その穏やかな海の中で、波動のように静かに伝わっていく。そして、その声を聞きつけた複数の意志がある一か所に集合した。意志たちは互いにまとわりつき、じゃれ合いながら、小さな塊となった。その塊が生まれると、その塊に、磁石に引き付けられる砂鉄のように、海中に漂っていた他の意志たちも引き寄せられていく。

 

やがて、塊は、当初から十倍にも、百倍にもの大きさとなった。その後、その塊は、体を持て余したのか、細胞分裂のように二つに分かれた。また、分かれた塊たち、さらに、その周りの無数の意志たちが、フジツボのように次々と付着した。

 

意志たちが数えきれないくらいの合体と分裂を繰り返したのちに、海中には、自由な形と自在な大きさの、無数の意志たちが生まれた。

 

その意思たちのうちのいくつかは、海中に漂うことに飽きたのか、海面に浮き出た。すると、突然、大波が襲ってきた。意志たちは大波に飲み込まれて、気が付くと砂浜に打ち上げられていた。そして、そのまま陸地へと自らの意志で這い上がっていった。

 

また、運よく、大波から逃れることができた意思たちも、強風にあおられ、吹き上げられると、しゃぼん玉のように空に舞い上がった。身のよりどころがなく、慌てる意志たち。それでも、その中のいくつかの意志たちは、手足をバタバタさせているうちに、海に落ちる前に、体は浮き上がった。そして、そのまま大空へと羽ばたいていった。

 


この本の内容は以上です。


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