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ここは、しずかな村。小麦畑がどこまでも広がっています。

 

村のお父さんたちは、畑でのしごとをおえて、お茶をのみながらひとやすみ。

 

村のお母さんたちは、その小麦で、おいしいパンをたくさんやいていました。

 

この村でできるパンはとてもおいしいので、ほかの村や街からも買いに来る人がたくさんいるほどでした。

 

 

 

その村には、こどもたちもたくさんいました。

 

毎日、川でおよいだり、森で虫をつかまえたり、花をつんでかんむりをつくったり。川や森や原っぱでたくさんあそんでいました。

 

 

 

そんななかで、とくべつなかよしの女の子がふたりいました。おてんばのビューと、おしとやかなサンです。

 

ふたりには、ひみつがありました。

 

じつは、ふたりは、まほう使いだったのです。

 

村にあらしがおとずれようとすれば、ビューはまほう戦士(せんし)になって、風のまほうで、あらしをふきとばします

 

村に雨がつづくと、サンはまほう妖精(ようせい)になって、太陽の光、村をてらします。

 

そうやって、村をまもってきたのでした。

 

 

 

ある日、みんながねむっている夜中(よなか)に、(あく)のかいじゅうワルワルが村にやってきました。

 

ワルワルはとてもこわいかいじゅうでした。夜中(よなか)に村や街をおとずれては、畑も家もすんでいる人たちも、ぜんぶ食べてしまうのです。

 

ビューとサンはすぐにワルワルのところへかけつけ、まほう戦士(せんし)と、まほう妖精(ようせい)にへんしんしました。

 

 

 

まず、ビューが、すごいいきおいで風をふきつけました。でもワルワルはびくともしません。

 

つぎにビューは、風のてっぽうで、ワルワルをうちました。それでもびくともしません。

 

そこで、ビューはさいごのしゅだん、タイフーンになって、からだごとぶつかりました。

 

ワルワルはそんなビューをわらってみおろしていました。

 

「わはは。そんなわざで、おれさまをたおすことができると思っているのかい。」

 

ビューはつかれはててしまいました。

 

 

 

そこで、サンに交代(こうたい)しました。

 

サンは、光のまほうを使わずに、ワルワルに話しかけました。

 

「ワルワルさん、あなたはどうして、村や街を食べるの?」

 

ワルワルはこたえました。

 

「おいしいからさ。」

 

「あなたのおなかの中には、食べられた人たちの悲しみがたくさんつまっているわ。それでもおいしいの?」

 

「それがおいしいのさ。」

 

「でも、ワルワルさん、あなたのかお、ぜんぜんたのしそうには見えないわ。」

 

「なんだと!」

 

「目はつり上がっていかりにもえて、口は耳までさけて、歯は大きなキバになって。」

 

「それがなんだというんだ。」

 

「どうしてそんなすがたになってしまったの?」

 

「・・・」

 

「ワルワルさんも、きっと、(あく)のかいじゅうになる前は、いい人だったんだと思う

 

それが、こんなかいじゅうのすがたになるなんて、きっとなにかあったにちがいないわ。」

 

 

 

ワルワルはだまりこんでしまいました。

 

そして、話しはじめました。

 

「オレは、ある村ではたらいていた、ふつうの男の子だった。

 

でも、おとなしかったから、みんなにいじめられて、だれもいっしょにあそんでくれなかった。

 

すると、ある日、まっくらやみの世界(せかい)から、ひとりのあくまが来て言ったんだ

 

『いじめられて、つらいだろう、くるしいだろう。(あく)のかいじゅうワルワルになって、みんなを食べてしまえ』ってな。

 

オレは、いじめられて、本当にくやしかったから、すぐその話にのった。

 

そして、いじめっこたちのいるオレの村をぜんぶ食べてやった。

 

はじめはおいしいとは思わなかった。でも、しばらくすると、おなかがすいてきて、村や街を食べずにはいられなくなった。

 

今もおなかがすいてたまらない。おまえたちの村をぜんぶ食べてやる。」

 

 

 

「そうだったのね。もともと食べたくて食べていたわけではないのね。」

 

「おなかがすくと、あくまが出てきて『こんどはあの村をねらえ』という。オレはそのとおりにしてきただけだ。」

 

「そんなことしていて、心はくるしくないの?」

 

「村や街を食べないと、オレがしんでしまう。」

 

「そんなことないわ。あなたは、もとの男の子にもどることができる。」

 

「なに、どうするというのだ。」

 

「わたしの光のまほうで、あなたの中にいるあくまをおい出してあげるわ。」

 

 

 

そう言うとサンは、とてもまぶしい光になって、ワルワルをてらしました。それはそれはまぶしい光でした。

 

サンは、自分の力をぜんぶつかいはたすまで、ワルワルをあたたかい光でてらしつづけました。

 

 

 

すると、ワルワルの中から、大きな黒いものが出てきました。あくまでした。

 

あくまは、サンの光がまぶしくて、まぶしくて、くるしがっていましたが、そのうちに黒い色がきえて、白くなっていきました。

 

 

 

そのとき、ワルワルのおなかから、いままで食べてきた村や街がぜんぶ出てきました。

 

そして、大きなかいじゅうのすがたがスルスルと小さくなったかと思うと、もとの男の子のすがたになったのです。

 

ワルワルは、もとの少年ヨッシにもどった自分のすがたにびっくりしました。

 

あくまも、なんと白い天使(てんし)のすがたになりました。

 

 

 

サンは、光をてらしてつかれていたけど、言いました。

 

「もともと、わるい人なんて、いないのよ。

 

なにかわけがあって、いかりでいっぱいになってしまうんだわ。

 

そうならないようにするには、自分も強くなければいけないけれど、わたしとビューみたいに、いい友だちをもつことも大切だと思うの。

 

これからがんばってね。」

 

 

 

ヨッシは言いました。

 

「サン、本当にありがとう。

 

これからは、いい友だちをがんばってつくって、いかりや、かなしみだけでいっぱいにならないようにがんばるよ。」

 

天使(てんし)も言いました。

 

「ぼくも、いかりやかなしみでくるしむうちに、いつのまにかあくまになっていたんだ。

 

これからは、みんなのよろこびやたのしみのために、天使(てんし)としてがんばるよ。」

 

 

 

そうして、ヨッシと天使(てんし)は、ビューがつくった風にのって、もといた村にもどっていきました。ワルワル食べてきた人たちも、風にのって、村や街へもどっていきました。

 

 

 

ビューはサンに言いました。

 

「話をするってたいせつなことなんだね。

 

わたしは、わけも聞かずに、『(あく)だ』と思ったから、こうげきしてしまったけど、ぜんぜんだめだった

 

でも、サンがいろいろ話をして、わけを聞いたら、光をてらしただけでかいけつした。

 

わたし、とてもたいせつなことを学んだ気がするわ。」

 

「ビューは、いままでも、風の力で村を守ってきたじゃない。

 

またふたり、力を合わせて、がんばりましょうね。」

 

 

 

夜が明けてきました。村ではいつものように、畑がたがやされ、おいしいパンのにおいがたちこめていました。

 


この本の内容は以上です。


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