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しなびた金?ぴかぴか金?畑の金?

 

 

数年前に未亡人になり、実母は一人暮らし。年齢は80代半ば。長女の私は車で20分の距離に居住。弟たちは遠居のため、長女の私が実母を買い物や病院などに連れていきます。

 

 

実母の難点は寂しいがために、相手が誰ともわからない電話に受け答えしてしまうこと。

 

今日は病院に行き、実家で昼食。食後にコーヒーを飲んでいると、実母が話し始めました。

 

 

 

実母 この間ね、リサイクル会社から「不要品はありませんか」って電話がきたんだよ。「いらない洋服とか着物はないか」とかしつこかった。

 

長女 お母さん、何て答えたの。

 

 

 

実母 そんなのないって言って、はいはいって話を聞いていたらさ、最後は「金はありませんか」って。

 

長女 やっぱり、そうきたか。

 

 

 

実母 「金の指輪とかネックレスとか、もう身に着けないものとかありませんか?」って。以前に売ってしまって、もうないよって言ったんだ。

 

長女 本気にしたかな。

 

 

 

実母 しないしない。「引き出しとかにまだあるかもしれませんよ」だって。

 

長女 うわ、危ない。

 

 

 

実母 とにかくないって言ったんだけど、それでもしつこいんだ。「一度伺って、見てみましょうか」って。

 

長女 うわあ、そうくるのか。

 

 

 

実母 しつこいからさ、からかってやることにしたんだ。

 

長女 なんて?

 

 

 

実母 あ、古い金ならあったけど、古いのはだめだよねって。

 

長女 古い金?

 

 

 

実母 ハハハ、古い金だよ。

 

長女 それは何?

 

 

 

実母 向こうは「古くてもいいですよ。ぜひ見せてください」って。

 

長女 わあ、しつこいね。

 

 

 

実母 しつこかったけど、母さんも負けずに、古くて汚いからだめだって頑張った。向こうは「古くて汚くても大丈夫ですよ」って食い下がってきた。

 

長女 そんでそんで?

 

 

 

実母 いやだめだ。古くて汚くてしなびてんだって言った。

 

長女 しなびてる?

 

 

 

実母 うん、そしてね、古くて汚くてしなびてる金だしね、それにもう燃やしちゃったんだって言ったの。

 

長女 燃やしちゃった?

 

 

 

実母 そしたら向こうはね「え?燃やしたんですか?」って不思議そうに聞いてきたんだ。

 

長女 金は燃えないでしょ。

 

 

 

実母 電話の向こうの若い男性に言ったんだ。「うちにあったのは古くて汚くてしなびた金だけど、あんたは若いからピカピカ。金ピカだよね」って。

 

長女 あんたはピカピカ?それって……。

 

 

 

実母 わかった?亡くなったとうさんの話をしたんだよ。

 

長女 いやだー!母さん!エッチ!

 

 

 

実母 若い男性は「あ、若いから金ピカって……えー!そういう意味ですか!」って。「お母さん、面白い!グッジョブ!」って言ってゲラゲラ笑ってた。

 

長女 グッジョブ!母さん、さすがだね。その話、もうネット上に載っているかもね。

 

 

 

 

次も金のお話。

 

 

カメおばあちゃんはツルおじいちゃんと二人で農村地帯に暮らしている。近隣は高齢者ばかりで、畑仕事をしたり、不定期に地域で開かれる昼食会やお茶のみ会に参加したりで、穏やかな日々を過ごしている。そんな農村地帯にリサイクル会社(以下RCと略)を名乗る電話がかかり始めた。

 

 

 

カメ はいはい、どなたさん?

 

RC お忙しい時間にすみません。リサイクル会社の者ですが。

 

 

 

カメ サイクル?

 

RC リサイクルです。いらないものとか使わないものがあったら買い取りしています。

 

 

 

カメ いらねえもの、使わねえもの?

 

RC はい、そうです。もう着なくなった着物とか洋服とかありませんか?

 

 

 

カメ ほだものねえな。

 

RC そうですか、ではアクセサリーはどうでしょう。

 

 

 

カメ なぬ、悪性?悪性って?

 

RC 悪性じゃなくてアクセサリーです。金の指輪とか金のネックレスとか。

 

 

 

カメ なぬ?チン?

 

RC あ、チンじゃなくて金ですよ、金。ゴールドです。

 

 

 

カメ チン?ゴールド?駅前のパツンコ屋か?

 

RC パチンコじゃなくて指輪とかネックレスとかです。金の指輪とか。

 

 

 

カメ はあ?ツンツン?オレ女だぞい?

 

RC いえ、ツンツンじゃなく金です。

 

 

 

カメ んで、おらいのツルじいさんのツンツン?

 

RC いえおじいさんのツンツンじゃなくて指輪とか。

 

 

 

ツル なぬや!オレのツンツンがどうしたって?

 

カメ じいさんのツンツンいらねのかって。

 

 

 

ツル いるよ!おれまだ使うってば。

 

カメ 何さ使うんだ?

 

 

 

ツル なぬって、しょんべん足るとき使うべ。

 

カメ そうが、まだ使えんのが。

 

 

 

カメ あのね、まだ使うんだど。

 

RC あのおばあさん、おじいさんのツンツンじゃなくて、指輪とかネックレスとかないですか?

 

 

 

カメ ゆび、ああ、指輪かあ、あったんだ。でも畑仕事していてなぐしたんだ。おらの畑さ指輪何個も埋まってんなあ。

 

RC 畑仕事していてなくしたんですか?探したらあるんじゃないですか?

 

 

 

カメ あっかもわがんねえな。あんだ探してみろ。

 

RC え、いいんですか?

 

 

 

カメ いいど。ただな、肥料代わりにオレらのクソ随分まいだから少しくせえかな。

 

RC え、クソまいたんですか?

 

 

 

カメ んだ、クソまいだ。全部クソまいだ。

 

RC クソまいでない畑はほかにありますか?

 

 

 

カメ ねえな。

 

RC えーっと検討してまた電話しますね。


奥付



しなびた金?


http://p.booklog.jp/book/129872


著者 : 大門ちこ
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