閉じる


<<最初から読む

9 / 9ページ

アップルパイを焼こう

 お城では、ガク王様が、今か今かと、7人の帰りを待っていました。

 すると、7人が続々と帰ってきました。それぞれが、大きいの、小さいの、そしていろんな色のリンゴを持っています。

「おお、みんな、本当によくやってくれた。心から礼を言う。つかれているところ悪いが、さっそく、それぞれのリンゴで、マウ姫のアップルパイを作ろう。お城一番のシェフ、レツに作らせよう。」

 王様の横には、長いコック帽をかぶったネコが立っていました。

「これは、本当に、すばらしいリンゴばかりですね!僕はマウ姫様が生まれた時から、アップルパイを焼いているんです。あとは、ぼくにまかせてください。」

 そう言うと、レツはさっそく、アップルパイを作り始めました。しんけんに、心をこめて、手ぎわよく、リンゴの皮をむき、スライスし、パイきじを重ね、いよいよオーブンへ入れました。

 しばらくすると、なんともいえない、いいにおいがしてきました。リンゴとパイきじ、シナモンがほどよく合わさった、とてもいいにおいです。そして何より、みんなの心がつめこまれていました。

 いよいよ、7つのアップルパイの焼き上がりです。オーブンから出したアップルパイは、どれも、パイきじがツヤツヤとかがやき、中身のリンゴはそれぞれ、変わったステキな色をしていました。

 ガク王様は言いました。

「では、さっそく、マウ姫のところへ持っていこう。」

 

 マウ姫は、部屋のベッドで、死んだように眠っていました。みんなで、焼きあがったばかりのアップルパイを運びこみ、ガク王様が、ひと切れずつマウ姫の口元へ持っていくのを、かたずをのんで見守りました。

 

まずはニコラのオレンジ色のアップルパイです。レツが言いました。

「これは、ネコ王国内のグルメたちの間でも、もんくのつけようのない、かんぺきなリンゴです。おいしさは、これを超えるものはないでしょう。」

 ガク王様は、オレンジ色のアップルパイを小さく切って、マウ姫の口元へ近づけました。

しかし、マウ姫の口は開きません。ニコラは涙をためて、マウ姫を見つめるしかありませんでした。

 

次は、スパイスの緑色のアップルパイです。レツが言いました。

「これは、マウ姫がいちばん好きなリンゴで作ったアップルパイです。これまでも、何度も、姫様にたのまれて、このリンゴでアップルパイを焼いてきました。きっと、大好きなはずです。」

 ガク王様は、緑色のアップルパイを小さく切って、マウ姫の口元へ近づけました。

しかし、マウ姫の口は開きません。スパイスは、天をあおぎました。

 

次は、ジェイドの青色のアップルパイです。レツが言いました、

「これは、ネコ王国で、いちばん空に近い場所のリンゴです。空の心をきゅうしゅうしていて、ひとくち食べれば、青空のような、すがすがしい気持ちになるはずです。」

 ガク王様は、青色のアップルパイを小さく切って、マウ姫の口元へ近づけました。

しかし、マウ姫の口は開きません。ジェイドは、くやしくて悲しくて、後ろを向きました。

 

次は、ハルの(あい)色のアップルパイです。レツが言いました。

「これは、まことにめずらしいものです。ゆめを見たものしか見つけることができないといいます。わたしも初めて見ました。」

 ガク王様は、(あい)色のアップルパイを小さく切って、マウ姫の口元へ近づけました。

しかし、マウ姫の口は開きません。ハルは、あくびも忘れて、立ちつくしました。

 

 次は、パルコの黄色のアップルパイです。レツが言いました。

「これは、ネコ王国内で、最高級のリンゴと言えるでしょう。どうくつ内の食べ物は、めったに手に入らないのです。」

 ガク王様は、黄色のアップルパイを小さく切って、マウ姫の口元へ近づけました。

しかし、マウ姫の口は開きません。パルコは、その場にかたまってしまいました。

 

 次は、ミーのむらさき色のアップルパイです。レツが言いました。

「これは、きれいな川の水で育つリンゴです。ひとくち食べれば、心身の心配ごとや、不安など、すべて洗い流されていきます。」

 ガク王様は、むらさき色のアップルパイを小さく切って、マウ姫の口元へ近づけました。

しかし、マウ姫の口は開きません。ミーは、その場にしゃがみこみました。

 

とうとう最後、サトの赤いアップルパイになりました。

 レツは言いました。

「これは、アップルパイにするのに、最高のリンゴです。すっぱさといい、食感といい、すべてパーフェクトなアップルパイです。」

 みんなが、むねに手を組んで見守りました。

 ガク王様は、赤色のアップルパイを小さく切って、マウ姫の口元へ近づけました。

しかし、マウ姫が口にすることは、とうとうありませんでした。

 

 ガク王様と、7人と、レツシェフは、声を上げて泣き出しました。

「ああ、最高のリンゴは、すべてそろえたのに、いったいどうして、マウ姫は目覚めないのだ。黒魔女め、美しいマウ姫がそんなににくいか。ああ、マウ姫。一体、どうしたらいいんだろう。」

 

 その時です。部屋の中に、真っ白な光がパアッと広がりました。みんな、おどろいて目をつむりました。しばらくして、そおっと目を開けてみると、マウ姫のかたわらに、真っ白な毛なみで、真っ白な服を着たネコが立っていました。みんな、おどろいて、ぼうぜんとしていると、そのネコが言いました。

「わたしは、ネコ王国に大昔から住んでいる白魔女です。かわいそうなマウ姫、黒魔女の魔法にかかってしまったのですね。」

 ガク王様は、すがるように言いました。

「そうなのじゃ。それで、マウ姫の大すきなアップルパイの中でも、この世で最高のものをあたえてみたのじゃが、姫は、いっこうに目覚めんのじゃ。」

 すると、白魔女は言いました。

「ええ、みなさんがいっしょうけんめい集めたリンゴで作ったアップルパイは、どれも、この世で最高のものです。マウ姫も大好きなはずです。あとは、私にまかせてください。」

 そう言うと、白魔女は、7つのアップルパイに、シャランシャランと、白い光の粉をふりかけていきました。するとどうでしょう。それぞれのアップルパイが、赤、オレンジ、黄、緑、青、(あい)、むらさきにかがやきだし、部屋は7色のかがやきに包まれました。そして、アップルパイは、7色にかがやく1つの大きなパイになったのです。きじは黄金色にキラキラとかがやき、こんがりとした焼き色からはサクサクの食感が、食べなくても伝わってくるようです。そして、パイきじの合間からは、にじ色のリンゴの、あまりにもまぶしいかがやきが、あふれだしていました。

「みなさんの、マウ姫への愛の結晶(けっしょう)のアップルパイです。こんな最高のものは、この世にありません。これで、マウ姫は助かるでしょう。」

 そう言うと、白魔女は、再び、白くまぶしい光に包まれて、消えてしまいました。

 みんなは、ゆめを見ているような気分でしたが、にじ色にかがやくアップルパイは、たしかにそこにありました。

「よし、これを、マウ姫にあたえよう。」

 ガク王様は、ふるえる手で、にじ色アップルパイをひと切れ、マウ姫の口元へもっていきました。みんな、かたずを飲んで、見守りました。

 

すると、マウ姫の口が自然に開き、アップルパイを一口、飲み込んだのです。

「めしあがられた!」

 みんなは、飛び上がって喜び、マウ姫が目覚めるのを待ちました。

 

 その時、マウ姫がスゥッと小さく息をすい、大きなひとみが開き始めました。

「マウ姫!!」

 ガク王様は、マウ姫の手をとり、大きな声で呼びました。すると、マウ姫は、ゆっくりとガク王様のほうを向き、にっこりと笑ったのです。そして、あのかわいい声で言いました。

「お父様、ふしぎなゆめを見ました。7人の勇者たちが、わたくしのために、ふしぎな色のリンゴを集め、それがにじ色にかがやくアップルパイとなり、それを食したとたん、この上もなく幸せな気持ちになったのです。」

 ガク王様は、あふれるなみだをぬぐいもせずに、言いました。

「そうか、そうか、マウ姫。よかった、よかった。7人の勇者たちは、ここにおるぞ。」

 そう言って、部屋の中にならんでいた7人を、マウ姫の元に呼びよせました。

 マウ姫は起き上がって、言いました。

「まあ、ゆめの中と同じ勇者たちですわ。

7人、それぞれの方法で、最高のリンゴを見つけてくれたのです。

それが合わさったとき、想像(そうぞう)もできないようなパワーが生まれたのです。

ああ、なんてすばらしいのでしょう。みなさん、本当にありがとう。」

 7人は、泣いたり、てれくさそうに笑ったり、喜びに目をかがやかせたりしながら、ひとりずつ、マウ姫とあくしゅをしました。

 

「さあさあ、こうしてはいられない。マウ姫の目覚めを祝って、パーティーじゃ!」

 ネコ王国のお城に、ふたたび、喜びが満ちあふれました。

 パーティーでは、7人のネコたちが、ひとりずつしょうかいされ、みんなのはくしゅかっさいをあびました。

 そして、このことを記念して、ネコ王国の新しい国の(はた)が発表されました。それは、きれいなにじ色でできた、ネコの顔の形の(はた)でした。

 こうして、ネコ王国では、困ったときにはこの(はた)を見上げ、みんながそれぞれの力を合わせて、ほがらかに乗りこえながら、すてきな国をつくっていきました。


この本の内容は以上です。


読者登録

haruさんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について