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第37話 辺陲

お父さんに連れられて、私と同い年の女の子が、この村にやって来たのは、おとついのことだった。

お父さんは私に言った。仲よくしてやるんだぞ。

はーい。

私は乱暴に言ったけど、内心、ものすごくうれしかった。だってこの村には、私の同級生は二人しかいなかったから。

ね、何して遊ぶ?と私は言った。その子は、まず宿題しなきゃ、と言った。偉いのね。でも、宿題はないのよ。と私は言った。実際、先生が宿題を出すのは年に2,3回だったし、出すとしても、お母さんに私が生まれた時の体重を聞いてくることとか、けがをしないようにすることだとかそんなに大変なことじゃなかったから、私はいつもアニメの中で宿題やりなさいって言われている小学生をちょっぴりうらやましく見ていた。だってなんだかかっこいいんだもん。宿題ってどんなことをするんだろう。そう思ったから、女の子に聞いてみた。宿題って、どんなことをするの?そうしたら、女の子は、それは先生次第だわ。と言ったので、会話はそこで終了してしまった。先生次第か。この村には先生が二人しかいないから、その先生は二人とも宿題をあまり出さないから、きっと先生が変わったら、私も宿題できるようになるのかなとその時私は思ったの。そして、宿題がないことについて女の子は驚いていたけど、自主的に勉強するんだと言って、その子の家に帰って行った。

その子の家は私の隣の家だったので、私は遊びに行った。宿題終わったの?と聞いたら、終わった。と言った。どんな宿題してるの?と私が聞くと、これ、といって、問題集を見せてくれた。わ、楽しそう。わたしにもやらせて。といったら、いいよ。とその子が言ったので、私は問題集を解いてみることにした。絵がたくさんあって、とても楽しかった。私はどんどん解いていった。そしたら、その子のお母さんがあわてて台所から出てきて、「ごめんね、これは、この子がやるものだから」と言われてしまった。

私はしかたなく、問題集を閉じた。

その日は、折り紙をして帰った。

 

次の日も、私は女の子の家に遊びに行った。

宿題終わったの?と聞いたら終わったというので、私は外に遊びに行くことにした。近くの川辺に、白い花が咲いていて、その花の蜜をすうととても甘いので、それを教えようと思ったのだ。

「いこ」と言って、私は女の子の手を引っ張った。すると、「いたい!」と女の子が叫んだ。

「あ、ごめん」

「なんともないの」と女の子は言ったけど、ちょっと私はびっくりしてしまった。

走っていこうと思ったけど、私はゆっくり歩いて行くことにした。

川に通じる小道に入って行くと、女の子が尋ねた。「どこへ行くの?」

「川だよ」

「え」

女の子はそこで立ち止まってしまった。

「どうしたの?」

「お母さんが、子どもだけで川に行っちゃいけないって言った」

「大丈夫だよ。小さい川だから。それに、川に入って泳ぐわけじゃないし」

私もだんだん心配になってきて言った。

「でも……」

「じゃあ、公園行く?」

「うん」

せっかく蜜の出る花を教えたかったのにな。と思いながら、私は公園への道を走っていった。

 

公園に着くと、同級生の男の子二人が、ボールを投げ合って遊んでいた。

「公園ってボールで遊んじゃいけないんじゃないの」と女の子が言ったので、「えー、そんなの聞いたこともない」と私は言って、飛んで来たボールを思いっきり男子の方に投げた。

「いてぇ」と向こうから聞こえて来たけれど、あははと私は笑って、あっち行こ!と、すべり台のほうに向かった走っていった。

私はすべり台に登っていくと、女の子は、「私、見てるね」と言った。「なんで?」というと、「スカートだし、汚れちゃうから」と言った。確かに昨日は雨だったから、ちょっとすべり台は湿っぽくなっていたけれど、そんなに泥だらけというわけでもなかった。

「大丈夫だって」そんなに汚れてないし。といったけど、いい、見てる。と女の子は言った。

 

5時になったので、放送が流れた。

「ほにゃらら村の皆さん。5時になりました。5時になったので、子どもはお家に帰りましょう。家に帰ったら、手を洗いましょう。」

「こんな放送が流れるのね」と言って、女の子は笑った。

「え?流れないの?」

と聞くと、「昨日初めて聞いた。と女の子はまた笑った。」

 

帰り道、二人で歩いていると、後ろから自転車に乗った男子二人が、びゅんと二人を追い越して行った。

「さようならも言わないでいっちゃったね」と女の子が言った。

「そんなの言ったことないわ」と私は笑った。

家に帰ると、カレーだった。やった!と私は急いでお風呂に入った。

今日はなんだか楽しかったなぁ。女の子は楽しかったのかな。でも、笑ってたし、いっか。

そしておいしいカレーを食べた。

 

私は布団の中で、日記を書いた。

 

〇月〇日

きょうは、あたらしいともだちと、あそんだ。ともだちは、川であそべないといった。

そして、こうえんで、ボールであそんじゃだめだといった。

そして、すべり台はスカートだったのですべれなかった。

さようならをいえなかったといった。

 

 

私は鉛筆を置き、ふと気づいた。

 

あ、この子、今日なんにもしてないわ。

 

 

 


奥付


【2019-04-16】指さし小説


http://p.booklog.jp/book/126645


著者 : 柿本慧こ
著者プロフィール:http://p.booklog.jp/users/resipi77/profile

 今回のテーマは、辺境みたいな言葉だったので、私は子どもの頃からへき地というところで生まれ育ったので、ぴったりだと思って書きました。都会は私の中ではこれはやったらダメというルールがやたらに多い印象で、文化の中心地なのに、そんなところから新しい文化は生まれてくるのかなぁという疑問が生まれてきました。これも偏見かもですが。

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