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風 狂(第55号)目 次

 

 


 海 亀                      出雲 筑三
 具体と抽象の間で                 高村 昌憲
   生々流転                     長尾 雅樹
  「歩くことは生きること」              なべくら ますみ
 カプリッチオ                   富永 たか子
 2月の空気                    高  裕香
 回 帰                        原 詩夏至

 
風狂ギャラリー
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エッセイ
 老人の冷水 (続き3)              北岡 善寿
 お茶さしあげます                   神宮 清志
 チェルノブイリ そして福島 (三)          高島 りみこ


翻 訳
 アラン『大戦の思い出』(二十一)         高村 昌憲 訳


執筆者のプロフィール


海 亀     出雲 筑三


アップルに行け
グーグルに行け
そして戻って来い

 

テスラにも行け
技能者軽視の日本へも行け
そして太って戻って来い

 

ハイテク覇権こそ
これからの新しき聖戦
見えない奴には見えない

 

若き海亀たちよ
金はいくらでも出す
故郷で思い切り暴れてくれ

 

能力ある人はさまざま
それを効率よく
利用するのが真の経営能力

 

貪欲さを持て
十年後には世界一の強国を
きみたち海亀に懸けていく

 

やられた方はぶつぶつ言うだろう
凧とマージャンと国力は
結果が実って笑うのだ


具体と抽象の間で   高村 昌憲


私たちは現実の中で生活していても
人々の期待に応える様に督促される
日々の暮らしだけで充実していても
向上心とか進歩がないと軽蔑される

 

現実を生きることが蓄積を生むのに
抽象的な目的は直線の様に儚いのだ
直線とはこの世の何処にも無いのに
生活の指針の如く言われているのだ

 

実際の具体的な運動の日々の歩みは
アキレスが亀を追い抜く様なものだ
無いことだらけの抽象的な思考では
的に届かない矢で満足するばかりだ

 

直線を具体的に表す不可能を知って
具体と抽象の相違を明確に自覚せよ
不変であろうとする傲慢の心を捨て
具体の中から確かな目標を確立せよ

 

目標が出来たらつまらぬことは避け
我が儘な人間の話は聞かないことだ
出来ることから行う方法を身に付け
日々の営みから蓄積を覚えることだ


生々流転    長尾 雅樹


山川草木皆生命ありと
仙崖の夢告を朝夜に尋ね
流転減滅の門流を
はるかな眼下に治めて
悠々自適の命運を神仙に潤す
遠大な眺望の天然自然から
桃源の裔が舟人に棹さし
漂泊の民人は人馬を引く
雲流れ霧迷う修羅人界から
山野の惰眠を破るものは誰か
清流集合して大河となる
満々として豊饒の輪廻を巡り
風雲の試練は俗界の塵埃を払う
威風堂々究極の救抜を求めて
天下る壮烈な生き残り作戦から
天上天下無明魔神の棲家となるか
はたまた法性真如の楽土となるかは知らず
唯に日々の安逸を祈り
とうとうと流れ下る人生流浪の旅を
溪谷の激流を転展して
峻烈の激甚を岩壁に刻む
人生の展望は茫洋として霞み
ゆるやかな水流に翻弄されながら
木の葉は沈み浮木は静かに漂よう
煩悩深き三悪未断のともがらたちよと
雷雲閃く修羅の闘浄現場から
生きるための闘いの映像空間が照写される
河口に辿り着いた一隻の小舟から
雄大な転生の秘話が語られる
水精の変身譚が天の怒りを鎮めるか
森羅万象生きとし生きるもの
生命ありと夢に諭されて
仙界の見聞を糺して人情の襞を覗く
無限に円環する大河の流転を垣間見る


「歩くことは生きること」    なべくら ますみ


こういう呼びかけで集まった人たち
市民会館の募集チラシを見て
まだ友だちとは言えない仲 
自己紹介はし合ったけど名前なんか覚えていない
ここは競い合う必要のないところ
歩くことを愉しむ年配者たち


背筋 手足を伸ばした準備体操の後 歩き出す 
歩く 歩く 大した景色でもない所を
物足りないなどと言ってはいけない
歩くのだ もっとの弱者の歩行に合わせて
今日のコースに登りはない 
干からびた空っぽの畑 隣りは茶色に枯れた葱の畝


高校の前を通った時 生徒たちが
「今日は!」と挨拶してくれた
殆どの人の孫世代 みんな笑いながら手を振って応えた
途中数人が横道に逸れ 帰りの駅へと向かった
落伍者だ などと言った人はいない


4時間 14㎞ 2万4千歩 今日の成果
まだ大丈夫 来月も歩ける
きっと皆もそう思っている だろう



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