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  (あらすじ)

 

・三途の川

・安楽死

・目覚め

・光害と死後の世界の関係

・隠れていた感覚

・満月

・天の川(星の花、星の渚)

 

  (あらすじおわり)

 

 

 

               〇

 

 

 

 雲一つない、青硝子より青い空。暖かな太陽の光。
 どこまでも続く花畑。
 赤い花、青い花、黄色い花、黄緑の花、緑の花、紫の花、青紫色の花、赤紫色の花、

ピンクの花、白い花。
 色とりどりの美しい花の薫り。花を飾るみづみづしい緑。
 その花々の中を横断する幅広い川。
 私は川のほとりの草花の上に座る。
 透明な川のせせらぎ。清らかな水の薫り。
 川は澄んだ青翡翠色をしている。

 

 これが三途の川なのだろうか。

 ここが死後の世界なのだろうか。

  

                          〇
              
 私は病室に入るとベッドに横になる。
 医者はベッドの傍らに立つと「本当にいいんですね、今ならまだ引き返せますよ」と言った。
 私「気持ちは変わりません。私は死にたいのです」
 ミツキが死んだ今となっては、この世に生き続ける意味がないのだ。
 医者はしばらく黙って考え込んでいたが、あきらめがついたのか私の安楽死のための準備を始めた。
 私は眠たいので目蓋を閉じた。眠っている間に苦しむことなく死ねたら上出来だ。
 ミツキと語り合った会話や長い旅をした記憶が思い浮かぶ。
 ミツキの最後の言葉は「またね」だったろうか。
 私は、二度と目覚めることのない眠りに落ちた。

 

 

 気がつくと私は青い空を見上げていた。
 私は狼狽する。病室にいたのに、いつの間に屋外に出たのだろう。

 それから私は安楽死の処置をしたことを思い出して落ち着く。
 もしかして、私は死後の世界に来たのだろうか。
 そういえば何か体の感じがいつもと違うような気がする。
 私は体を起こす。
 見渡す限りの花の海が広がっている。遠くに川が見える。
 花畑に川といえば日本人が見る臨死体験そのままだ。
 ということはやはり私は苦しむこともなくあの世に来たのだろうか。
 しかし臨死体験談の多くは花畑に来てしばらくすると、故人に出会って「まだ、お前はここに来るべきではない」などといわれて現実に帰還することになる。
 私が死んだと思うのは時期尚早だろうか。そもそも死後の世界ではなくリアルな夢の可能性もある。
(死者に出会うことがあるということはミツキと会えるかもしれないということか。末期の夢にしてもあの世にしても)。
 思考に一区切りがつくと私は甘い花の薫りに気がつく。それに緑のなかに咲き誇る色とりどりの花々の美しさに。
 私は青い川に向かって歩き出した。


 私は川のほとりにたどりつくと草花の上に座る。
(これが三途の川か)。
 青水晶のように澄んだ川は、静かにせせらぎ流れている。
 そよ風が舞い、優しく私にふれる。
 私の他に人は誰もいない。
 私は待つ。ミツキが会いに来てくれると信じて。

 

 思い出すのはミツキと二人で見上げた天の川だ。
 川のように光る星々。花畑のように光る星々。
 星の花々。星の川。
 世界各地の人々から、様々な名前で呼ばれる天の川。
 星辰の海、精霊の道、天使たちが使う道、神の手巾、雁の道、雲の蛇、
星の原、鳥の道、マリアの道、稲の花の星たち、太陽乳の道、鶴の羽、
 そして、死者の道。
 ミツキは天の川を見上げながら言った。
「都会の空に星が少ししか見えないのは、地上の人工の明かりが強すぎるから。光害っていうらしいわ。
 だから都会から離れると地上の明かりが少なくなって、こんな綺麗な星空が見えるようになるらしいわ」

 光害。もしかしたらその現象で、今の私の状況を説明することができるかもしれない。
 強すぎる地上の明かりは星々の多くを隠してしまう。
 それと同じように強すぎる現実の肉体感覚が、もうひとつの肉体(霊体?)を隠してしまったのではないだろうか。
 私が死んだとき、肉体の感覚が全て消えたとき、強すぎる肉体感覚に隠されていた別の感覚が、入れ替わりに立ち現れたのではないか。
 その生きている時には知覚できない隠されていた感覚が、今の私を形作っているのではないか。
 隠さていた視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚、その他の諸感覚。それが霊体と呼ばれるものではないだろうか。

 そして死後の世界とは隠されていた感覚によってしか知覚できない、もうひとつの現実ではないだろうか。
 感覚ならぬ感覚。
 肉体ならぬ肉体。
 現実ならぬ現実。

 

 あたりは暗くなり、月光に照らされた花の海は、満天の星のように青く光っている。
 星の花の海。
 見上げた空は宝石の暗青色に変わっている。
 私は星を探す。なぜか見当たらない。
 私は美しく輝く満月を見る。
 ミツキという名前を、漢字で満月と書くのをふと思い出す。
 視線を落とすと、川の向こう側にミツキが立っている。
 私は立ち上がる。
 ミツキは川に静かに入る。
 私も川に入る。川は星々のようにきらめき、冷たくなく、濡れることもなかった。
 私たちは川の真ん中で向かい合う。
 月光と星のようにきらめく川の明かりに照らされたミツキは確かに私の知るミツキだった。
 ミツキは優しく微笑んでいる。
 私も微笑む。


 きらきらと輝く星の川。
 星の渚には、星の花々が咲いている。


 その時、私は気づく。
 川が、三途の川でなく天の川だったことに。
 天の川の中で、月明かりのなかで、私たちは抱きあう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        参考文献 

大林太良 「銀河の道 虹の架け橋」

 

(転載を禁止します)

 

 

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最終更新日 : 2019-01-02 23:02:32

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