閉じる


<<最初から読む

1 / 2ページ

非才

 このところ、私は自分の庭に池を作っている。

それは、長年夢見たことが、実現できないということを思い知ったからである。

職業適性検査というものが義務化されてから、早六年がすぎようとしている。

私は法令にしたがって、今年初めてその検査を受けた。

私の職業希望欄には、「泉を作りたい」と書いた。

しかし、その結果、なれる確率は、0%だったのである。

私は落胆した。途方もなく落胆した。

子どもの頃からずっとあこがれていた。

泉をつくることができれば、他は何も望まないとさえ思った。

けれど、この検査の結果では、私は挑戦することすら罪になってしまうのだ。

私は、あきらめきれず、自分の庭に池を作ることを思いついた。

この位なら、許されるだろう。

スコップを持ち出し、私は穴を掘り始めた。土は思ったより堅く、掘っているうちに、余計なことは、何も考えられなくなった。

頭は空っぽになり、新鮮な空気だけが、頭の中に流れた。

ようやく自分の納得いく深さまで掘り、止水作業を終えると、私は土の上に寝転んだ。

「あとは、頼むよ」と空に語りかけた。

 

次の次の日、どしゃぶりの雨が降った。

池の中に、どんどん水が溜まっていく。

どこかからやってきたカエルが、どぷんと、池の中に飛び込んだ。

「これで、完全な池になった」と、私は、つぶやいた。

 

 


奥付


【2018-08-16】指さし小説 第29話


http://p.booklog.jp/book/123463


著者 : かっこ
著者プロフィール:http://p.booklog.jp/users/resipi77/profile
 
今回のテーマは、「非才」でした。このことばが出たとき、あんた才能ないよ。と言われたみたいで、心にぐさっときました。けど、書き続けないと、生きていけない気がするので、この人みたいに、人知れず池を掘っていきたいと思います。

感想はこちらのコメントへ
http://p.booklog.jp/book/123463



電子書籍プラットフォーム : パブー(http://p.booklog.jp/)
運営会社:株式会社トゥ・ディファクト



この本の内容は以上です。


読者登録

柿本慧こさんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について