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わかりやすい将来像

経済政策については、幅広い分野の人達から様々な議論がなされていますが、どれも

今ひとつ身体感覚で受け入れることができるものがない、と感じています。

政治家も経済学者も、あるいは多くの専門家たちの話を聞いたり、書かれたものを読ん

でみてもなかなかしっくりときません。

経済行為自体が、不合理な存在である人間がおこなう活動であり、しかも経済活動自

体がグローバル化してきたことでよりわかりにくくなってしまったようです。

日々目まぐるしく動く株価や為替の変動は、一般の人にはほとんど理解不能なのでは

ないでしょうか。

 

ご存知のように消費税増税前の議論においては、多くのエコノミスト達によって増税を

おこなっても経済成長は可能だという議論がなされました。

現在の結果は、ほとんどのエコノミストの予想が外れましたが、その影響からか二度に

わたって増税が延期されることになりました

 

ここ数十年来の議論には、根本的な瑕疵があるのではないか、と考えられます。

もっとも、国民からすれば所得が増えない上に増税されるわけですから出費を減らすこ

とで生活の自己防衛をするのはやむ負えないことでしょう。

 

もとはといえば、高度経済成長期に政官で対応してきた社会保障制度のつけを今の政

治家や官僚が担わされてしまった感もありますが、当事者としてその場にいる以上、現

状の中でよりよい施策を考えていく責務があります。

また、国民もできる範囲で学んでいく姿勢が必要になりますが、その機会のひとつがテ

レビでしょうか。

極まれに勉強できる番組があります。

何事も好奇心をもって探しだし、学ばなければ、先(未来)には進みません。

 

企業活動の現場をみれば、常にコストダウンから日々の事業が進められており、賃金が

増加するなどということは考えにくい環境があります。

本来、正社員の雇用ができるほど収益があがっている企業までもが、非正規社員の雇

用をおこない人件費を抑え高い収益をあげています。

多額の内部留保(現預金等)が貯まってくれば、投資ではなく自己株取得をおこない株

主価値を上げるといった短期的視点の経営もあるように思われます。

 

消費が増加しない要因を考えるとき、二つの側面がありそうです。

 

 

 

 

ひとつは、企業の経営活動から考えるということでしょうか。

たとえば、トヨタが自動車販売台数では世界一を確保していますが、このような企業で

さえコストダウンを主導する経営しかできていないという現実があります。

そのことは、まさにグローバル競争の中で付加価値が少ない製品を作っているからで

はないでしょうか。

常にドイツや米国、あるいは韓国、中国などから猛烈に追い上げられているからです。

WRCには、「現代」が参戦しており、2017年からトヨタも復帰するようですが、米国の

CarMD® 2015 Vehicle Health Index™ Lists」では「現代」がトップになってい

るようです。

このようにわが国におけるリーディングカンパニーが率先してコストダウン型経営、いわ

ばデフレ型経営を推進しているわけですから、その他の企業における経営も推して知

るべきではないでしょうか。

経営活動の実態からみると、本質的にデフレ経済、いわば経済成長ができない経営活

動をおこなっている主体は企業自身だということになります。

 

とくにコストダウン型経営は、下請け企業といわれる中小企業へいけばいくほど経営内

容が厳しくなり、現行の中小企業の賃金水準や福利厚生などなかなか厳しいものがあ

ります。

また、大手企業で雇用されている非正規社員の賃金水準にも厳しさがあり、賃金水準

の構造化が進んでいます。

まさに企業全体で総デフレ経営を推進していますから、政府が財政出動しても焼け石に

水程度の効果しかあがっていなように思えます。

Abenomicsの経済効果には、部分的な成果はありましたが、経済構造が変化した

わが国においてこれ以上の期待をすることそのものが酷なのかもわかりません。

この点では、賃金を上げることが可能な企業から賃金を引き上げていくことが求められ

ますが、経済状況の好転による採用の激化によって賃金水準が引き上げられてきまし

たので経営改革をおこなっていける前提が揃ってきつつあるように感じます。

 

経済活動の本質からいって株主へのリターンよりも、まず人に投資をしていくことが優

先されるべきです。

そうすることで新規事業の投資が可能となります。

その逆をおこなっている企業がありますが、超優良企業といわれているようなところで

も経営に陰りがみえはじめてきています。

行きつくところまでいかないと変われないのかもわかりませんが、シンプルに考えれば、

国も企業の発展も「人へ投資」することからはじまります。

 

 

 

二つ目は、政治的な課題でしょうか。

先日、BSフジのプライムニュースで『資本主義“最終局面” 脱成長依存と社会の形』

(2016/7/18)というテーマで議論がされていましたが、この中で慶應大学経済学部

教授の井手英策氏の話は一般の人にもわかりやすく説明がされており、わが国の消費

が拡大していかない本質的な問題に切り込んでいたように思えます。

私は、政治に信頼をおいていない国民からすれば、現状におけるわが国の生活環境

では自己防衛に走るのは必然だ、と考えてきました。

しかし、どのような方法で政治的な信頼を勝ち得るか、という具体的方法論は持ち合わ

せていませんでしたので、井出氏の話の内容は、案外シンプルで国民にわかりやすく

財政と社会保障の関係を理解してもらうことができ、しかも消費を拡大させていくための

具体策ではないか、と感じました。

 

政治の世界に入ると複雑な関係者(利権)との調整などを通すことで本来わかりやすく

国民に提示できるものが、その影響で不鮮明になったり、意味が曖昧になったりと本来

の制度改革から離れていくことで、増税だけがクローズアップされることに問題がある

のではないでしょうか。

直観的に言えば、増税の中身が理解されておらず、将来が明確にみえてこないことで

生活防衛をはじめているように感じます。

増税の中身が理解されておらずということは、やはり将来像が不明瞭な状態だというこ

とになるのでしょう。

政治の側には、不明瞭にしたい意思が働いているように見えてしまい、国民はそこに

「不信感」をもつことになります。

本来、軽減税率の導入などは、税と社会保障のあり方が国民に納得感がもたれてはじ

めて議論の対象となるものでしょうが、増税の意図が明確でなく国民に理解されていな

いと感じている政治の側が小手先の技術を駆使して減税しているようなものであり、こ

れも国民にはみえているのではないでしょうか。

釈然としない増税の意味をまず明確な方針とプログラム化で見える化し、国民の安心

と信頼を勝ち取っていくことが最優先されるべきではないでしょうか。

 

若い世代に生活の身体感覚をもった学者(学者らしくない)がでてきているのは頼もし

いです。

政治家に議論させるよりも、このような若手の意見を取り上げていく場が重要なのでは

ないでしょうか。

選挙の特番などよりも、よほど勉強になりました。

 

 

 

 

 

【参考資料】

韓国車1、3位でトヨタ4位!米新車品質調査の要因

DIAMOND Online 2016.07.21

 

財政社会学者、井出英策のブログ

 

 


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最終更新日 : 2016-07-22 13:36:07

この本の内容は以上です。


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